五十朗の剣とゼットの双剣,溶鉱炉の上の足場を何度も飛び移りつながら衝突し合う。
剣と剣の交わいは何度も続けられた。
だが,溶鉱炉から離れた場所でついに展開を迎える。
ゼットのスタミナが切れ掛かっている。
彼は相手が警察官だからと軽く思い,つい調子に乗って張り切ってしまったからだ。
ついに剣を振るう腕に衰えが見せ始めた。
その隙を見た五十朗は空かさず,前蹴りを与える。
ゼット「うわあああっ!! やべぇっ! 相手はこんな野朗だったとは…」
凄まじい前蹴りを食らい吹っ飛ばされたゼット。
相手の実力差を思い知ったのか,さっきまでの怒気は一変,青覚める様になる。
五十朗「どうした,軍を止めて怠けてしまったのか?」
ゼット「くそおっ!」
直ぐに立ち上がったゼットは五十朗に背を向け,その場から逃げだす。
五十朗「くそっ!」
五十朗もゼットの後を追い掛ける。 …と,その前に
五十朗「クリスは正男を探してくれ!」
クリス「分かったわ」
ついでに正男を探す様,告げるのであった。
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〜 ヘリポート 〜
ゼット「はぁはぁ…」
工場を飛び出しヘリポートに辿り着くゼット。 そこに一機の偵察用ヘリが留置されていた。
ゼットはヘリに乗り込もうとするが,直ぐに後ろから五十朗が迫ってきている。
このままでは半殺しになる。
そう判断したゼットは機内から2つのロケットランチャーを取り出し,
それを両肩に乗せた。
ゼットの本気度は最高点に達する。
ゼット「食らえ!」
両肩のランチャーから砲弾が放出,2つの砲弾が五十朗に向けて軌道に沿る。
五十朗は咄嗟にそれを避けた。
砲弾は工場の壁に着弾,壁が崩壊し,工場の内部がさらけ出す。
ゼット「すばしっこい奴め」
ゼットは一気に8つの砲弾を放出した。
五十朗それ等の砲弾を避けながら,ゼットに近づいてくる。
避けられた砲弾はそのまま工場の壁や設備に当たり爆発する。
全ての砲弾を避けた五十朗はゼットの真ん前まで近づき,足蹴りを食らわせる。
ゼット「ぐわあっ!」
吹っ飛ばされるゼット。 同時にロケットランチャーは地面に落ちた。
五十朗「物騒な連中が出るご時世だってお前から言われたが,お前がなってどうする?」
ゼット「うるせえぇ!」
見下ろされた! …と,そう思ったゼットは五十朗と殴り掛かる。
五十朗も応戦,暫く殴り合いが続けられた。
…が,ゼットは戦闘中に余計な行動を何度も起こした為,ついにスタミナ切れ!
フラフラのゼットを見た五十朗,容赦なく奴の顔面に3発パンチを食らわせた後,
頭部にカミソリパンチならぬカミソリチョップを与えた。
チョップを受け,強烈な頭痛を受けたゼットは白目を向き,
鼻水を垂らしながらその場で倒れ込んだ。 気絶だ。
五十朗「互角の戦いかと思ったが,何ともなかったみたいだ…」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
地響きに気付いた五十朗は後ろを振り向いた。
見ると,工場が燃えているではないか!?
先程,ゼットが放ったロケットランチャーの砲弾による爆発の衝撃で
古くなった無数の配管が一気に破裂。
さらに噴きだしたガスが爆風で引火,工場の至るところで誘爆を引き起こした。
おまけに建物全体が老朽化していた為,火災と共に工場が崩れ出した。
五十朗は愕然した。 だが,どうにもならなかった。
ガガガ・・ ドガシャーーーーン!!!
轟音と共に工場はあっという間に崩落した。
五十朗「何てことだ…」
五十朗は失意の余り跪いた。
???「ゲホッ ゲホッ!! やってくれたなぁ五十朗!」
この声は正男! 五十朗は顔を上げた。
前方を見ると,工場の崩壊で出来た大量の煙から人影が映っていた。
煙から正男の姿が現した。 気を失ったクリスを御姫様抱っこをした状態で…
正男(???)「俺を助けようとした割には一瞬死に掛けたぞ…」
工場は予期せぬトラブルで崩落したが,正男とクリスは無事に脱出する事が出来た。
これにて正男の救出作戦は,ある意味成し遂げたのである!