ドラゴン「グオオオォーー!!」

 

 

激闘が長引き,地団駄を踏みつつ荒々しい咆哮を吐き散すドラゴン。

ドラゴンの様な獰猛な魔獣の存在にどれ,多くの人々が苦しめられているのか察しが付くであろう。

 

怒気が高まったドラゴンは口から熱気が帯び出し始め,それが一定に達した瞬間,正男に向けて炎を噴きかけた。

ドラゴンの定番技! 火炎プレスである。 口から吐き出す業火の炎はあらゆる物を燃え尽くすであろう。

 

だが正男にとっては噴出先を予測しており,さっと軽く避けた。

 

御自慢の技を避けられた事でドラゴンは更にイラ立ち,目が充血し始める。 

機嫌の損ねやすい魔獣に敵側も扱い辛いだろうなと思う正男。

 

ドラゴンは再び口から熱気が発した。 またあの炎を噴こうとしているのである。

吐き出す量を増やすべく,大きく息を吸い出した。

 

 

それを見た正男は…

 

 

正男「"おやつ"やるから頭冷やしな」

 

 

ドラゴンの口に向けて"おやつ"を投げ出す正男。 

本気に持ってた餌で頭を冷やそうとするのだろうか? だが,そんな事はない。

 

 

彼が言うその"おやつ"とはクレネード、すなわち爆弾である!

 

 

投げたクレネードはドラゴンの口に入った。

 

 

ゴクン!

 

 

ドラゴンはクレネードを飲み込んだ。 餌と勘違いしたようだ。

だがドラゴンはそれは爆発物である事を知らなかった。 …そして

 

 

ドオオォーーーン!!!

 

 

ドラゴンの胃袋の中で大爆発! 

両目大きくパチンと開いたドラゴンは暫く硬直した後,そのまま後ろへ倒れ込んだ。

 

 

正男「この憧れは叶ったが,グラーダと変わらんな」

 

 

 

 

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数十分後…

 

 

ドラゴンとの戦いを軽く済ませた後,街の人々に話を聞きつける。

暗黒竜神帝国軍の勢力が何処に及んでいるか確かめるためだ。

 

宿屋に戻り,部屋に入った正男はすぐ道具屋で購入した地図を開く。

その地図に赤鉛筆で丸いマークを3つ付け足した。 付けたのはどれも各国の中心地であった。

人々の情報ではそこで敵の勢力が活動しているとの事…

 

目標を決めると地図を仕舞い,宿屋を出た。

 

 

正男「ひさびさの大冒険の始まりだな」

 

 

この先では幾多の騒乱が待ち受ける,そう承知しながらこの街を後にしたのであった。

 

 

 

 

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〜 暗黒竜神帝国軍 側の視点 〜

 

多数の翼竜が舞い,雷が幾度も落ち続ける薄暗い空。

枯れた草や木,ゴツゴツした岩脈。 この環境ではとても人が暮らせるような場所ではない。

 

にも関わらず,煮え滾る溶岩の中心にある島で巨大な城が建っていた。

漆黒で覆われた外壁から何処か不気味に思わせる。

 

 

〜 王座 〜

 

部屋の壁にある燭台には赤いロウソクが何本も立てられているが,灯る火はどれも乏しかった。

そのお陰で部屋一面,暗い雰囲気を漂わせている。

 

その部屋で三人の若い男女が立っていた。

 

 

???1「それで現在の進捗はどうなっている」

 

???2「今日は順調だ。 俺が試行錯誤で練り続けた策で侵攻を捗っている」

 

???3「どれくらい侵攻しているの?」

 

???2「そうだな,良い具合で絞るすれば…

アクアリアス  ヴェルフォルニア  フレイム  …だな。」

 

???1「俺が知っている国ばかりだ。 ついに手持ちも功績を上げたか」

 

???3「シーッ! 当主が来られたわ」

 

 

女性がそう言うと,王座の大扉が開き,そこにまた一人の男が入って来た。

 

 

この男こそ暗黒竜神帝国軍の長,竜神王である。

 

 

竜神王「皆,ご苦労だったな」

 

???1「最近,調子が良くなっただけです」

 

竜神王「まぁそうだな。 だが,不都合な事が起きた」

 

???1〜3「…?」

 

竜神王「今朝,私の部下の報告から赤い帽子を被った者により,

300人の兵士と一匹の巨大な竜が倒された」

 

???3「赤い帽子…?」

 

竜神王「そうだ,その者の名は正男と言う」

 

???1「正男!」

 

???2「アイツめ! 何で,こんなところへ」

 

竜神王「恐らく,偽善に包まれた誰かが彼奴を切り札として召喚されたのだろう」

 

???1「あぁ…,考えてみるとそうだな」

 

竜神王「とにかく,まずは冷静に保つ事だ。 そうすれば,全てが成し遂げられる」

 

???2「だと良いがな…」

 

竜神王「しかし,どうも気がかりなところがある。

ならばこうしよう,俺達3人が各国に分かれてそこで身を固める」

 

???2「また奴と相手にする事になるのかよ」

 

???1「仕方ないな…。 部下共だけじゃ頼りにならないしな」

 

???3「正男というその人,どんな顔か見てみたいわ」

 

竜神王「これで決まった。 各自に分かれて,その国に迎え」

 

 

正男が現れ今後の事を話し合いをした結果,

3人は各国に分かれ,向こうで防衛する事になった。

 

 

 

 

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〜 街 〜

 

正男がこの街を離れてから数十分後… 

宿屋で先程,正男と同じ部屋で停泊していたあの女性二人が宿屋の店主に話しかけていた。

どうやら,ある人物を探していたようだ。

 

店主からある人物の行き先を聞き出した後,彼女らもこの街を離れた。

 

 

女2「今朝の噂を聞いてボク感激したよ。 私達が戦っている間,

隣にいた男の人が桁違いの数をやっつけるなんてね」

 

女1「でも,変な格好した人がどうして危険なところへ向かうのかなぁ」

 

女2「その人の事,気になるわ。 会ってみる価値ありね」

 

 

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