ゼロス「くっ! いずれ来る時に備え力を蓄えてきたが、お前のしつこさに押されそうだな。
だが俺の渾身の一撃で逆転させてやる!」
正男「成程、手っ取り早いじゃないか!?」
ゼロスは自分の力を最大限にまで溜め込んでいく。
正男も同じく全身を集中して力を漲らせる。
正男「いくぜええぇぇぇっ!!」
ゼロス「いつも通りに勝てると思うなぁぁ!!」
溜め込んだ力を基に強力な攻撃を互いに放ち合う。
どちらも炎の属性で火力は凄まじいものだ。
二人の力が衝突した。
衝突に伴うエネルギーの摩擦が波動を生じ、周囲に拡散する。
マシュリン「きゃああっ!」
ルルン「うわああっ!!」
衝突による波動に巻き込まれた二人は吹き飛ばされ壁に激突して気絶する。
正男(くそっ…、可哀そうな事をしてしまった。 終わったら、丁寧に起こしてやる)
二人に害を及ぼした事を気づいていたが振り向く余裕はない。
手に力を籠め此方に来るゼロスの力を抑える。
ゼロス「もう一度聞く、欲望の為に此処に連れてこられた事を知ったらどうする!?」
正男「そうだな…、うおおおおおおぉぉぉぉぉ」
ゼロス「ぐうううおおおおわわわあわわぁぁぁぁーーっっ!!」
幾度の戦いで積み重ねられた力でゼロスの最大の攻撃を押し切った。
正男の攻撃を食らったゼロスは後方へ何本の柱を壊されながら吹き飛んだ。
床に背中から落ちたゼロスはそのまま床に滑り込み、やがて止まった。
長きに渡る決着は着いた。
三度目の正直を正男はその場で果たしたのである。
ゼロス「くそおぉぉ…」
正男「どうするかって…、まぁその時はその時だ。 臨機応変にやってみるのみだ」
ゼロス「薄っぺらい答えだな」
床に倒れた自分の身体を上半身から起こし、苦渋の表情を浮かべるゼロス。
自分の命が絶たれない限り傷ついても戦おうという気概が感じられる。
竜神王「そこまでだ!既に決着は着いている」
ゼロス「竜神王! …ここは身を滅ぼすまで戦い尽くさなければ」
竜神王「ゼロス、四天王として役目を全うし忠義を尽くすのならば私に命に従うべきではないか?」
竜神王に突如制止を掛けられたゼロスは正男打倒が阻まれた事で気が動転し憤慨したが、
悟りの言葉を聞かされた時はふと我に返った。
四天王として帝国軍の一員としての務めを忘れていたようだ。
ゼロス「竜神王の言うとおりだった…、後は任せる」
竜神王「それでいい」
心残りがあったが敗退を受け入れたゼロスは身を引いた。
いよいよ竜神王と対峙する。
正男「意外だな…、ゼロスのあの口ぶりでも怒らない。前から寛容なのか?」
竜神王「常に堅苦しい空気を漂わせるのは余り好ましくない。
君が正男だな。 四天王を打ち勝ち、私のとこまで辿り着く君の実力に称賛する。
四天王といってももう一人は遠方で出回っていて不在だがな…」
正男「という事はアンタが魔王達を纏めるボス…、こんなに物腰の柔らかい敵を見たのは初めてだ」
竜神王「ふふふ… 竜神王レオナルドを甘く見ないほうが良い。
これでも長い歴史の中で数多の人種に敵対し猛威を振るわせたからな」
正男「にしても、ゼロスのやり取りではキツくはなかった。
どういう事だ? お前は本当に悪としてやっているのか?」
レオナルド(竜神王)「此方の内情なぞ知らなくても良い。
すぐに命運を掛けた戦いを始めるぞ」
レオナルドの背後に強烈なオーラが放った。
まさに王としての風格。
オーラの熱風に圧倒される正男。
しかし、責務を果たす為怯む訳には行かない。
正男「俺は奴の本意を探りたい…、まずは勝たなければ」