正男が住んでいる街の警察署内。
横一列の並ぶデスクの中から、一つのデスクの前に一人の若い男性警察官が朝刊の新聞を読んでいた。
その新聞にはある記事が掲載されていた。 それは技術系の大学の不祥事の発覚である。
その大学では、高度な科学技術の教育により多くの優秀な学生を輩出している。
しかし、以前起きたロボットの暴走事故の事件では、
事故調査を行わず全ての責任を学生に押し付けるという理不尽に極まりない行為が判明。
さらにそれ以外にも様々な不祥事が生じており、その大学な杜撰な運営に波紋を広げた。
警察官はその記事を一瞬目に止まったが、関心が無かった様で次のページへ捲った。
読み終えた新聞をデスクの上に置くと、椅子ごと後退り、両手を頭に付けて腰を曲げる。
警官「はぁ・・・、結構疲れるぜ」
彼の名は五十郎。 彼は正男のいる街に勤務する警察官だ。
学生の頃、剣道部をやっていたのか、他の警察官に比べ、彼は剣術の腕前がある。
五十朗「街のパトロールに、住民の下らない苦情、暴走族の追いかけっこ、
さらにはモンスター駆除にまで、あぁ草臥れそうだぜ」
モンスターの駆除とは、ペットモン等のモンスターが街に入り込むのを防ぐ為の対策の一環である。
以前、ある男がそれを担っていたが、その任を受け継いでいる。
五十朗「猛獣対策なんて狩猟の団体に任せればいいだろう、
何で俺達街のお巡りさんがこんな厄介事を回さなければならないんだ」
愚痴を零しながら席を立つ五十朗。
五十朗「まぁいい、明日は有給休暇で休みを取っている。
ただ、その日はどうしようか・・・」
あてずっぽうで取っており、その日をどの様に過ごすべきか決めていなかった。
彼は目を瞑り悩みだしたが、数十秒の末にある事を思いつく。
五十朗を新聞の横に置いてあった雑誌を手に取った。
五十朗「そうだ! 京都へ行こう。 うん、そうしよう」
雑誌の表紙には京都の写真が載っていた。
そして次の日・・・
~ 京都市 ~
この街は寺や神社等、観光名所が多く、世界有数の観光地として有名である。
また、大昔は室町幕府が設置しており、政治の中心地でもあった。
五十朗「ここが古都京都か・・・、修学旅行以来かなぁ。
さてと、ここに来たもんだし、懐かしい友人に会いに行こうか」
そう言うと、彼は友人のところへと向かう。
~ バスの車庫 ~
友人の下へ辿り着いたのは、バスの車庫。
多くの観光客が名所へ送り出す役目を担う路線バスが多く留置する場所であり、
交通の拠点の一つとして機能を果たしている。
五十朗「やぁ、河原。 俺だぜ、五十朗だぞ」
河原「ありゃ、誰だと思ったら五十朗かぁ。 久しぶりじゃないか」
河原はここの路線バスの運転士。
そして、五十朗とは学生時代から友人である。
河原「態々、僕の顔を見る為に来てくれるのは嬉しいよ。
しかし、その服装は何だい?」
五十朗「あぁこれか・・・、これもある意味、私服なんだ」
五十朗の服装は私服と謳っているが、実際は警察官の服装である。
五十朗「( ・・・そうだ。
この世界では"向こう"の世界の警察官の服装だと認知されていないんだな )」
五十朗は正男達がいる向こうの世界から"世界を行き来する技術"を利用して、
この世界へやって来たのだ。
とは言え、河原が学生時代から馴染み深い存在である事から、
彼がこの世界に生まれているのは事実となる。
そんな彼がどんな理由で向こうの世界に行き、そこで警察官になったのかは謎に包まれている。
五十朗「アンタの夢であるバスの運転士が、ここで実現するとはね」
河原「あぁそうなんだ。 この街は結構、落ち着いた雰囲気をしている。
運転士になると同時に、ここに引越して来た」
五十朗「ほぉ~、アンタの言うとおりだ。
大阪や東京と比べれば、あんなウズウズしい事は無いもんだな」
河原「ところでさ五十郎。 俺がここに来て、愛嬌のあるバスに出会ったんだ。
アレを見てくれ」
河原があのバスに向け指を刺した。
そのバスは前後の上部分に形状が丸みに帯びており、角ばっている部分は見られない。
また他の路線バスに比べ、車体が小さい事から小型バスである。
河原「あれはね、ポンチョと呼ばれているんだよ。 前の小型とは馴染み深いんだぞ~」
五十朗「はぁ・・・」
河原のポンチョの可愛さ振りを熱弁するが、バスに興味が無い五十朗にとっては無関心であり、
その話題を聞いてる風に見せかけて、実際は受け流している。
五十朗「さてと、そろそろ行くとしよう」
河原「もう行くんだね。 短い間だったけど、楽しかったよ」
旧友に別れを告げた後、五十朗は車庫を後にしようとしたその時、
五十朗の視線の先に、不可解な影が此方へ向かってくる。
その影が五十朗を通り過ぎた同時に、上空から何かが空気を切り裂くきながら横切る。
五十朗「うわっ」
河原「なっ 何なんだ!」
地上でそれに起きた突風により、二人は目を覆う。
五十朗「上から鷲でも飛んできたのか?」
河原「それだとしたら、僕達を餌と勘違いしているのでは?」
鳥と思った二人は、横切った何かを見るため、顔を上に上げた。
空中に飛んだものは鳥では無く・・・
人だった。
五十朗・河原「!?」
謎の男「ハハハ、ここに来るのは久しぶりだ」
謎の男は移動を止め、ボバリングを飛行行った。
そして、二人を見下ろし、高らかに嘲笑う。
彼が飛行出来るのはジェット噴出装置付きの鉄の翼を背負っているからだ。
五十朗「何だ、お前?」
河原「あっ! 君は3ヶ月前に行方不明になった和郎じゃないか!
一体何処に行ってたんだ?」
五十朗「誰だ、知り合いか?」
河原「ここの同僚だよ」
和郎(謎の男)「ククク・・・、この時が来たからこそ使うべきだな」
そう言うと、刀を取り出す和郎。 上空に振りかざすと、地上に向けて一気に振り払う。
すると刀から衝撃波が放ち、停泊していた路線バス群に向けて飛来する
ズガアァーーーン!!
衝撃波が直撃し、凄ましい轟音と共に路線バス群は一気に大破、
やがて全てが燃料で引火した炎に包まれ黒煙が空へモクモクと昇って行く。
これを見た二人は一瞬、唖然とする。
和郎「おっと、コイツもついでに」
和郎は再び刀を振り落とし、刃の形状をした波動を放つ。
その先は河原が自慢するポンチョだった。
そして波動がポンチョの真ん中に直撃、車体が真っ二つに割れ、大爆発を引き起こした。
河原「あっ ポンチョオオォォォーーーーー!!!!」
和郎「ハハハ、気持ちよかったぞ」
高笑いを上げた後、和郎は京都駅へ向けて飛び去って行った。
五十朗「くそっ 器物損壊の罪で現行犯逮捕そのものだぞ!
おい河原、とにかく消防車を呼べ! 俺は奴を追う」
五十朗はポンチョを失い泣き沈む河原に通報を促した後、
和郎を追い車庫へ飛び出したのであった。
・・・同時に五十朗の最も危険な京都観光が幕を開ける。
THE CYBER ERROR 2 Ver2007