〜 駅前 〜

 

次の日、この日はレポートの為に鶴来市へ向かう日である。

少年は予定時刻に遅れないように、早めに出発して駅前に着く。

他校の生徒が来るのを待つ為、少年は取り合えず、時計台の下にあるベンチに座り込む。

 

 

少年はその人が来るまで、時間を許す限り、ひたすらベンチの上で

俯きの姿勢になりながら待ち続けていた。

 

 

残りの時間が刻々と過ぎていく中、まだその人が来る気配は無かった。

予定が狂うのではないかというプレッシャーが彼の心内に感じ始める。

 

 

少年「あぁもう、クソ遅いぞ!」

 

 

苛々したのか、片足を地面に2回踏んづけた。

その人は今日の予定を忘れたのかと思い込みを始め・・

 

 

少年「もう行くか・・」

 

 

まだ来てもいない他校の生徒を置いといて、

自分だけ行こうという前代未聞の暴挙に乗り出した。

 

 

しかし、椅子を立とうと、地面に俯いていた顔を上げた時、

そこにピンクのスポーツウェアの格好をしたツインテールの女の子が立っていた。

 

 

少年「・・・・?」

 

 

少女「ふぅ〜ん、地味な格好だね。」

 

 

少年「知らない人に言われたくないな・・。」

 

 

そう言うと、駅の中へ向かおうとした少年。

 

 

少女「私を置いといて、行こうとしていたでしょ?

 

 

その声を耳にした少年は再び、少女の方へ振り向く。

 

 

少年「誰なんだい・・?」

 

 

少女「私は君と一緒に鶴来市へ向かうんだよ。」

 

 

少年「君か・・?」

 

 

少女「えぇっ・・、私の先生から君と一緒に行くように言われてさ」

 

 

少年「そうなんだ。 悪かった。 イラつき易い俺の顔を・・。」

 

 

少女「いいの! ちょっとバスに乗って遅れた私が悪いの・・。

そろそろ列車が来るみたいね。 早く行きましょ。」

 

 

イライラが収まった少年は他校の生徒である少女と共に駅の中に入った。

その後、予定時刻に来た鶴来市行きの快速列車に乗車、駅のチャイムが鳴り響きた後、

列車は動き始め、駅から出て行った。

 

 

少年少女二人はこれから3時間をかけて鶴来市へ向かうのである。

 

 

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〜 とある密室の中 〜

 

ファンタジーさが漂う魔界にて・・

魔界にある居城の中にある密室で、一人の男が魔のオーブを使って、ある人物を探していた。

その男の名はゼロス。 帝国軍の一員でありながら、仲間と共に過激ペットモン保護団体と偽装して、

正男が住む世界を世界制服の為に下見を行った人物である。

 

 

オーブを両手でかざし続けている最中に

一人のチャラっとした赤色の髪の毛をした青年が入ってくる。

 

 

赤髪の青年「やぁ、おじさん。」

 

 

ゼロス「この顔でおじさん呼ばわりするとは、失礼にも程があるぞ。」

 

 

赤髪の青年「わりぃねww おじさん。」

 

 

ゼロス「やれやれ・・ マリネの優秀な部下とは言え、

こんな性格じゃ、あの少女には一生打ち勝てんよ。」

 

 

赤髪の青年「まぁまぁ、一生とは無いでしょう?」

 

 

ゼロス「はぁ・・、そんな事言われたくなかったら、言われないように努力しろよ。」

 

 

赤髪の青年「はいはいww にしても、どこにいるんだい?

あのクソ生意気な小娘野朗はよww。」

 

 

ゼロスはオーブに指差す。 それに釣られ赤髪の青年はそれを見始める。

オーブの表面に、女の居場所が映っていた。

 

 

ゼロス「こやつは少年と一緒に鶴来市という街に行くそうだ。」

 

 

赤髪の青年「じゃあ分かった。 今日も、行ってくるわあぁぁぁぁ!!」

 

 

そう言うと、走りながら密室の外へ出て行った。

 

 

ゼロス「マリネ・・、もっと厳しくしつけられないものか?」

 

 

溜息を付くゼロス。 直後、オーブに異変が感じるのを気づく。

 

 

ゼロス「どういう事だ? 鶴来市という街に別の邪気が感じるんだが・・?

まぁいい、アイツなら何とか行ける筈だ。」

 

 

ゼロスはオーブをタンスの中にしまい、密室から出て行った。

 

 

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〜 鶴来市へ向かう快速列車の車内 〜

 

この時の時間帯は真昼で、天気は曇り空。 

山のトンネルを抜け、田園地帯を沿って走る快速列車。

走行する列車から来る風で、稲がゆらゆらと揺れている。

 

 

車内の席は対抗式のクロスシート。 少年少女は向かい合ってお互いに座っている。

あれから何時間立ったのだろうか? 少年は腕時計で確かめると、

乗車してから2時間以上立っている。 長らく座り続けていたのか、少年は眠気が感じてきた。

 

 

少女はコンビニで買ったサンドイッチを食いながら、少年に話しかけた。

 

 

少女「ねぇ、何であの街でレポートなんかするの?」

 

 

少年「中学よりも、たまには良い成果を出したくてね。」

 

 

少女「ふ〜ん・・。」

 

 

少年「どうして、俺と一緒に行こうとしたんだ?」

 

 

少女「先生に言われて、そうしたの。」

 

 

少年「でも、2時間もここに座るなんて思っていなかっただろ?」

 

 

少女「宿題がすっきりするなら、いいや。」

 

 

少年は思った。 喋る事の少ない自分が、少女と出会ってから、会話する回数が多くなった。 

意外にも気が合っているのだろうか・・?

 

 

そんな中、車内のチャイムが鳴り響いた。

車内のアナウンスから、間もなく鶴来市に着くという知らせを聞く。

 

 

少年「そろそろ着くのか・・」

 

 

快速列車が駅に着いた後、二人は列車から降りて、

駅の改札口を抜け、駅の外へ出て行く。

 

 

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〜 鶴来市駅 〜

 

少年「1万人の街じゃ、結構寂れているな・・」

 

 

駅前周辺は大都市と比べひっそりとしていた。

駐車場ではタクシー1台ぐらいしか止まっていないぐらいだ。

 

 

少年は早速、近くのバス停に近寄り、時刻表を確認する。

時刻表では市役所を経由して公園、病院へ向かうバスがある。

意外にも本数が多かった。 昼間で1時間に2本、30分間隔で運行している。

 

 

少女「もう来るらしいね。」

 

 

直後、バスが来たようだ。 二人は迷わず、そのバスの中へ乗車した。

 

 

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〜 バスの中 〜

 

少年「ここも、ひっそりしているな。」

 

 

駅前から数十メートル先に商店街があるが、

左右を見渡すと、シャッターで締め切っている商店が多かった。

この街に活気が取り戻すのは難しいのが現状であろう。

 

少女「それで、どこに行くの?」

 

 

少年「まず、市役所さ。」

 

 

二人はまず市役所へ向かって行った。

 

 

二人が乗るバスが商店街から走り去った直後、

道路にあるマンホールの周りに亀裂が入りだした。

 

 

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〜 市役所 〜

 

目的地に着き、バスに降りた二人は、早速、市役所の中に入り、

受付で職員を呼び出し、職員が駆けつけに来た。

少年はレポートの為に社会福祉支援事業について話をしたいと尋ねる。

 

 

尋ねられた職員はそこで待ってと言わんばかり、受付から離れ、デスクの上にある

受話器を取り出し、誰かと話した。 そして数分・・

 

 

近くのエレベーターが開きだした。 そこから40代ぐらいの女性が出てきた。

 

 

40代の女性「貴方達が、レポートを書きに来た人?」

 

 

少年「そうですけど、何か?」

 

 

40代の女性「受付の人から聞いたわ。 どうやら、例の事業について話をしたいと・・。」

 

 

少年「じゃあ、貴方は誰ですか?」

 

 

40代の女性「私はこの街の市長よ。」

 

 

少年「そりゃあ、驚きました。」

 

 

少年は、手で頭を掻いた。 市長だと知り、少々興奮していた。

 

 

鶴来市の市長「では、私の部屋へ」

 

 

二人は早速、市長の後へと付いて行った。

 

 

この時、書類整理をしていた一人の30代の女性職員が

少年と少女が市長と共にエレベーターに乗るところを見ていた。

 

 

30代の女性「あら・・、見慣れない人ね。」

 

 

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〜 市長室 〜

 

市長室に入った3人。 少年はシャーペンを持ちながら、

市長に事業についての話を聞き始めた。

 

 

少年「あのぉ・・、この事業の制定の経緯について説明をお願いします。」

 

 

鶴来市の市長「えぇっとね・・、この事業は・・」

 

 

まず、政策の概念について説明をする。 少年は一昨日から知っていたものの、

失礼に当たる為、一応ノートに記していく。

 

 

また、この政策を提案して推進、制定を行ったのは、鶴来市の市長、

少年の目の前にいる人物であり、その効果が現われて以降、世間から注目を集めるようになった。

 

 

この事業をもとに活動を行っている者は、職員と住人を合わせて約30人程である。

その中に一人だけ、この街に移住した者も含まれている。

 

 

その後、市長から街の歴史等、色々な話を聞き取った。

 

 

少年「満足のいく取材でした。 ありがとうございます。」

 

 

鶴来市の市長「いえいえ、またこの街に来てくださいね。」

 

 

今回の取材でレポートが完成した。 二人は市長室から退室し、市役所を後にした。

 

 

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〜 市役所前 〜

 

少年「けっこう長かったな・・、書くのに大変だった。」

 

 

少女「ねぇ、この後、どうする? このままお家に帰る?」

 

 

少年「この時間帯だと、帰りの列車はまだみたいだな。」

 

 

少女「そうだね。 夕方にならないと来ないみたいだし。」

 

 

少年「そうだ。 それまでに、公園でのんびりしよう。」

 

 

そう言うと、二人は鶴来緑地公園へ向かって行った。

 

 

二人が公園へ向かっていく姿を30代の女性が市の職員室から眺めていた。

 

 

30代の女性「この人達は普通じゃないわ。

これから私なりの良い環境を作るのに、支障が起きなければいいけど・・。」

 

 

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〜 鶴来市街・商店街 〜

 

閑散とした商店街に異変が起きた。 

道路上のマンホールの周りに、また亀裂が入った。

さっきのと比べ、大きなものだった。

 

 

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〜 鶴来緑地公園 〜

 

鶴来緑地公園に来た二人。 そこでは、緑の生い茂った木で

埋め尽くされた自然味が溢れるところだ。

 

 

木々の狭間にある道を通っていく二人。

 

 

少女「久しぶりに、いい空気が吸えるね。」

 

 

少年「本当だな。 しかし、やけに静かだな・・。」

 

 

少女「夜になったらお化けが出てきそうだね。」

 

 

少年「冗談は止めてくれよww。」

 

 

カラスの大群「カァカァカァカァ!!

 

 

少年と少女が会話をしている最中だった。 

木に止まっていたカラスの大群が、空に向かって飛び立って行ったのだ。

突然のカラスの飛び立ちに、二人は驚いてしまった。

 

 

少年「なんだよ・・、心臓に悪いぜ。」

 

 

二人は再び、公園の中を進んで行った。

 

 

カラスの大群が商店街の異変に察知し、

怯えて飛立ったのを二人は知らなかった。

 

 

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〜 鶴来市街・児童公園 〜

 

緑地公園の散策を終えた二人は、帰りの列車が来るのを見越して、

再び街に戻っていた。 この時は夕方であったが、空は曇っていた。

 

 

少女「歩いてここまで来るの、疲れるよね。」

 

 

少年「まっ、そうだな。 ・・・それに」

 

 

少女「・・?」

 

 

少年「今日で出会って、今日でお別れか・・」

 

 

少女「そうみたいね。」

 

 

少年「ちょっと、その辺にある水を飲みに行くわ。」

 

 

水飲み場に行き、少年は栓を捻って、蛇口から出てきた水を飲み始める。

 

 

他校の生徒と一緒に行くとは思っていなかった少年。

長かったようで短かった一日が良い思い出として感じるようになった。

 

 

だが、その良い思い出になる筈の一日が、

惨劇だらけの一日に変わろうとしていた。

 

 

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〜 鶴来市街・商店街 〜

 

 

マンホールの周りに亀裂の入った道路が・・

 

 

 

 

一気に崩れ

 

 

 

 

大きな穴が出来た。

 

 

 

 

狂気に満ちた異型の何かが

 

 

 

 

異様な声を上げ

 

 

 

 

そこから、湧き出したのである。

 

 

 

 

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〜 鶴来市街・児童公園 〜

 

ズドオオォォーーーーン!!!!

 

 

同じ頃、商店街で起きた陥没による衝撃が、児童公園にも及んだ。

その衝撃音が、二人の耳に響いた。

 

 

少年「・・・?」

 

 

少女「・・・!?」

 

 

少年の鼻穴から飲み水が垂れてきた。

少年は栓を閉め、鼻穴から出た水をティッシュで拭いた。

 

 

少女「何!? 事故でも起きたの!?」

 

 

少年「下水道の破裂じゃないか? とにかく、行ってみよう。」

 

 

二人は児童公園を離れ、商店街へと向かって行った。

 

 

この後、狂気に満ち溢れた街の姿を見て、

驚きを隠せなくなる。

 

 

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〜 大通りへの裏道 〜

 

少女「本当に何が起きたんだろう・・?」

 

 

少年「さぁな、下水道の破裂と考えた・・。

・・でも、行ってみないと分からない。」

 

 

裏道を出て大通りに入り、二人は商店街の方へ振り向いた。

そこで、異様な光景を目にする。 昼間、この道路は閑散としていた。

しかし、そこには何故か数十人の男達が道路上を歩き回っていた。

全員、ヨロヨロとした歩きをしており、まるでホラー映画に出てくる屍を思い出してくる。

 

 

少年「何なんだ・・? こいつ等」

 

 

小言で言う少年。 しかし、その僅かな声の音がもとで、

男達全員が此方の方へ振り向いてきた。

 

 

少女「うわっ・・!」

 

 

これを見た少女は顔面が青く染まる。

 

 

彼等の素顔は顔面に幾つかの血脈が

浮き出しており、目は赤く充血、

口にある歯は、脆く、今にも取れそうである。

 

 

その男達は睨みつくような表情をして、二人を見続けていた。

二人からしてみれば、悪い雰囲気が漂う。

 

 

こうした状況で沈黙が続き十秒後・・

 

 

白いTシャツを着た男達「うおおおおぉぉぉぉーーーーー!!!」

 

 

案の定、恐ろしい展開へと突入した。

屍の様な歩きをしていた男達が、威勢を上げ、二人の方へ走り出した。

 

 

二人は身の危険に感じた。 男達が威勢を上げて、こっちに向かってくるというのは、

自分達に襲い掛かっていることを意味するからだ。

 

 

こうなれば、逃げるしか方法は無い。 

 

 

しかし、少年は逃げるという行動を出さず、背負っていたカバンを下ろし、中を開ける。

そこから、クローゼットから出てきた、指紋認証装置付きの硬そうな箱を取り出す。

その装置の画面に自分の指を押し込んだ。 

すると、装置のランプが赤から緑に変わり、箱が開きだした。

 

 

箱の中から取り出したのは、少し大きめの銃器だった。

 

 

指紋認証装置の付いた箱は、銃器を厳重に保管する為のものである。

本来、今日の取材に必要な物では無かったが、近年の情勢であってか、

身の危険を守る為に、あえて持参する事になったのだ。

 

 

少年は銃器を手に取り、襲ってくる男達に向け、引き金を引こうとした。

 

 

ドキューーーン!! 

 

 

ズガァーーーン!!

 

 

突然、自分の横に、大きな光の弾が通り過ぎ、それが先頭に立つ男の胸に命中、

その弾は爆発を起こし、男達は爆風に巻き込まれた。

 

 

少年は後ろを振り向いた。 そこに、少女が先端に

赤い宝石の様な物が付けられた長い棒を構えていた。

彼女がそれで光の弾を放ったようだ。

 

 

少年は”コイツが弾を放った!?”と言いそうな顔をしながら、驚いていた。

 

 

少年はその杖や少女の正体について、聞こうと考えていたが、

今の状況ではその余裕は無かった。

 

 

まずは、衝撃が起きた根源へ向かう事である。

 

 

 

 

 

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