〜 市役所・内部通路 〜

 

修平は市長を含む職員達を探し回っていたが、行けども行けども、人は見つからない。 

地下から現われた化物の様な物の襲撃で殺されたのだろうか?

殺されたのならば、何処かに死体がある筈だ。 それが無ければ、此処から脱出をしているのだろう。

 

 

暫く歩くと、会議室に辿り着いた。 

扉を開けようとドアノブを持って押そうとするが、ビクともしなかった。

扉の奥に、何かが引っ掛かっているのだ。 引っ掛けるとしたら、椅子かテーブルぐらいだろう。

人の手でやったものだと思えば、会議室の中に人がいる。 そう感じた彼は扉の奥に向かって一声を掛けた。

 

 

修平「大丈夫ですか?」

 

 

鶴来市の市長「その声は・・、レポートしに来た人!?」

 

 

すると彼の一声に反応があった。 会議室から返事が返ってきたのだ。

どうやらこの部屋に避難したようで、扉の前に椅子やテーブルを置いて、

化物の様な物に入り込ませないようにしていたのだ。

 

 

修平「大丈夫ですよ。 外の敵はもう片付いているんで。」

 

 

会議室の人達は彼の言葉に半信半疑だったが、受け入れてくれた。

塞いであったテーブルや椅子を退かし、開けられるようになった。

 

 

修平は会議室の扉を開けた。 

会議室の中には市長を含む職員達だけではなく、子供を含む住民もその中にいた。

無事に助け出す事が出来た後、修二は会議室の人達を外へ連れて行く事にした。

 

 

 

 

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〜 市役所外・駐車場 〜

 

修平が会議室へ足を運んでいる頃、春美は襲い掛かってくる片手シャベルの狂人に向けて、

魔法攻撃で応戦した。 彼女の攻撃に耐えていた狂人は、『ウオオオォォ!』という

弱弱しい声を出し、そのまま地面に倒れた。

 

 

春美「良かった。 私の魔法が効いたみたいね。」

 

 

戦いを終えた春美は、地面に座り、足を広げて休憩をした。

そして十分後、市役所の玄関から修二と会議室に避難していた人達が出てきた。

 

 

修二「・・・何だ、この化け物は? アイツは?」

 

 

春美「これは戦いの途中に乱入してきたの。 お陰でグレイドは逃げたね。

でも、あの男は私が知っている刺客。 また来ると思う。」

 

 

修平「そうか、ますます嫌な展開になるな」

 

 

40代の女性「君達、助けてくれて有難うね。

危険だから、この街から離れたと思っていたけど、まさか助けに来てくれるなんて・・。」

 

 

春美「無事で何よりです。 皆さんも早く、私と一緒に街から離れましょう。」

 

 

鶴来市の市長「そうね、他の住民に避難勧告も出しているし。

私達も逃げた方が得策ね。」

 

 

40代の女性「でも、病院の人達が心配だわ。 避難勧告を出したけど、

向こうは人員が少ないから、全ての患者が避難させているかどうか・・。」

 

 

彼女のその言葉に、皆は心配する様になった。 

これを見た修二は、こう言い出した。

 

 

修平「それだった、僕が確認しに行きますが。」

 

 

突然、思いもよらぬ提案に、彼意外の人達は驚いた。

 

 

修平「これだと『正気?』と言われますよね。 でも行動しないと、向こうは今頃・・」

 

 

鶴来市の市長「でも貴方じゃ!」

 

 

30代の女性「市長さん。 もう一度、彼に託してみては如何でしょうか?

まだ子供ですが、危険を承知の上で私達を助けたのはこの子達ですよ。

これは正しく奇跡と言ってもいいのではないでしょうか? 再び彼らを任せれば、

病院の人達を助ける事が出来るかもしれませんよ。」

 

 

30代の女性は修二を擁護した事でさらに困惑したが、やがて沈静した。

 

 

鶴来市の市長「そうね・・。 危険だとしても、そうするしかないわね。

軍隊や治安部隊が此処まで来るのに半日は掛かるわ。」

 

 

修平「これで決まった訳ですね。」

 

 

30代の女性「さてさて、貴方は初めて見る顔ね。

紹介するわ。 私は幸江。 社会福祉支援事業の役員で医師を務めているわ。」

 

 

修平「へぇ・・、貴方も役員の人ですか。」

 

 

修平は幸江に握手を交わした。

 

 

幸江(30代の女性)「それに貴方も初めてね。 

凄いわね。 機械の付いた人を倒すなんてね。」

 

 

春美「えぇ、向こうが襲い掛かってきたので・・」

 

 

春美も幸江に握手を交わす。 因みに、機械の付いた人とは

STAGE2−3のボスであり、片手シャベルの狂人である。

 

 

鶴来市の市長「貴方の踏ん張りが功を奏するか祈っておくわ。」

 

 

修平「必ずとも・・」

 

 

二人は市役所から離れ、病院へと歩いて行った。

会議室にいた人達は街の外へ避難する為、別の方向へ向かって行った。

 

 

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〜 道路 〜

 

春美「ねぇ、何でこんな事を言ったの?」

 

 

修平「何がだい?」

 

 

春美「 『確認しに行く』って!」

 

 

修平「あぁ確かに言った。 本当は逃げようと思ってた。

でも、病院の事を思うとつい…」

 

 

春美「そんな理由で・・」

 

 

修平「それに、何で付いていく?」

 

 

春美「だって、一人じゃ、無茶な事が増えるから。」

 

 

修平「単純…。 身の程知らずはお互い様」

 

 

春美「私・・、幸江さんと握手する時、気になった事があったんだ。」

 

 

修平「・・?」

 

 

春美「私ね、人の肌を触れると、他者の心を

読み取れる能力を持っているの。」

 

 

修平「へぇ、面白いな。」

 

 

春美「幸江さんは顔を見たら優しいと思うけど、

実際は憎悪に哀しい気持ちは強かったみたい。」

 

 

修平「仕事のストレスだろうか?」

 

 

誰もいない歩道の上で会話を交わす、そうしている内に段々と

鶴来緑地公園が近づいてくるのであった。

 

 

 

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〜 ビルの屋上 〜

 

とあるビルの屋上の端にグレイドが立っていた。 

片足をパタパタしており、どうやら苛立っているようだ。

 

 

グレイド「さっきのクソみたいな化け物のせいで、台無しだぜ。」

 

 

”クソみたいな化け物”とはSTAGE2−3のボスであり、片手シャベルの狂人である。

 

 

グレイド「それにあの帽子の野朗も邪魔だ。 先にソイツを始末しておくかなぁ!」

 

 

グレイドは剣を取り上げ、ビルの屋上から飛び降りた。

”帽子の野朗”とは修二の子とである。

 

 

 

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〜 鶴来市の郊外・総合公園 〜

 

 

修二達と別れて1時間後・・

 

 

街の外れにある総合公園のグランドで避難した人達は

ここで避難場所を設立していた。

 

 

鶴来市の市長「あの子達、心配だわ。 やはり行かすのが間違いだったみたい。」

 

 

40代の女性「・・とは言え、あの子達は只の子供じゃないのよ。

さっき、化け物の死体が転がっているのを見たでしょ? どう見ても、あの人達しか思いつかない!」

 

 

鶴来市の市長「確かにそうだけれど・・。」

 

 

40代の女性「ひょっとしたら無傷で帰ってくるかもしれませんね。」

 

 

数十秒間の沈黙の後、話題を切り替えた。

 

 

40代の女性「そう言えば、何処に行ったのかしら?

幸江さん、さっきまでここにいたけれど、いきなり姿を消したわ。」

 

 

鶴来市の市長「・・!?」

 

 

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