〜 鶴来緑地公園 ( 修二の視点 ) 〜

 

 

 

修平の手から白い光を放ち、そこから数本の鋭い針を飛ばす。

所謂ニードル銃みたいなものだ。 グレイドはその針を剣で防ぐ。

 

 

グレイド「そんなもん,俺に効く訳が無いわぁぁ!!」

 

 

グレイドは一瞬の速さで修二に近寄り,剣を振り落とす。

修平はスコップで受け止め・・・

 

 

何と,スコップで剣を受け止めたのだ。

 

 

グレイド「おいっ 何でスコップが斬れないんだ!」

 

 

修平「魔法で耐久を増した。 これ気に入ってる」

 

 

グレイド「・・!?」

 

 

そう言うと,修平は息を荒げながら,右足でグレイドを前蹴りをした。

蹴りに喰らったグレイドは即座に態勢を立て直した。

 

 

グレイド「なめんなぁーー!!」

 

 

グレイドは剣を前方に向き,突進を図った。

修平は刺される直前のとこで避けた。 突進した剣は木に深く突き刺さる。

 

 

グレイド「くそっ 抜けねぇ!」

 

 

グレイドは必死で引き抜こうとするが中々抜けない。

その間に修二は・・

 

 

バーン!!

 

 

スコップでグレイドの背中を1発,強く叩き込んだ。

 

 

グレイド「ぐわあっ!」

 

 

余りの痛みに倒れてしまったグレイド。

 

 

修平「二度と俺に相手にしないでくれよ」

 

 

そう言い,修平は病院へと走って行った。

 

 

グレイド「あの野朗・・・。」

 

 

グレイドの表情には怒りと恨みが表れてきた。

 

 

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〜 鶴来緑地公園 ( 春美の視点 ) 〜

 

人形「ギャアアア!!」

 

 

ボウガンを持った人形は春美の攻撃により,プロペラが破損。

そのまま落下し,さらには階段の下の方へと転がって行った。

 

 

春美「こんな奴もいたんだね・・,ちょっと手強くなってきたかな・・?」

 

 

春美は再び,階段の上へ登っていった。 上りきれれば病院は直ぐそこだ。

 

 

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〜 鶴来市立医療大学病院・駐車場 〜

 

 

春美「ここが病院かぁ・・。」

 

 

春美が辿り着いた先は病院だった。 昼の時間帯に訪れていたが,

事件が起きた為,再び此処に来る事になった。

 

 

前は明るい雰囲気の病院であったが,事件が起きてから一変した。

窓の明かりが殆ど消え,賑やかさが失われており,人の気配すら

感じられない病院となっていた。

 

 

春美「何があったのか分かっているけど・・」

 

 

??「ついに此処が廃墟みたいになった様ね。」

 

 

右の方から女の声がした。 突然の声掛けにより一瞬身体全体が震えた春美だったが,

落ち着きを取り戻し声の方へ振り向くと,其処に幸江が立っていた。

 

 

『何だ幸江さんかぁ・・』と心の中でそう言いながら,安心する春美だった。

 

 

春美「幸江さん・・・,何で貴方が此処にいるんですか・・?」

 

 

幸江「ウフフ・・それはね。 後ろに置いてある軽自動車があるでしょう。」

 

 

幸江は軽自動車で此処に来た様だ。

 

 

春美「あぁそうかぁ・・成る程ね。 ・・・って,単身で危険なとこに来たんですか?」

 

 

幸江「えぇ・・,ちょっと心配だったから。 他の同僚と市長から目を離して,

貴方のとこへ来たの。 私の方が早かったかしら (少々微笑む)

それで修二君は何処にいるの? 逸れたのかしら・・?」

 

 

どうやら他の同僚と市長は,幸江が自己的な行動で

病院へ行った事は知らない様だ。

 

 

春美「逸れてなんかいませんよ・・,修二は後で来るから・・,きっと・・。」

 

 

幸江「そうなの・・。 じゃあ修二が来るまで二人でお話でもしましょうか・・。

何の話がいいかしら・・。」

 

 

春美「こんなところでですか? まぁ話す内容が思い浮かばないなぁ・・。」

 

 

幸江「そうね・・こんな状況だと余り思い浮かばないのは当然ね。

私から話すわ・・。」

 

 

春美「まぁどうぞ・・」

 

 

幸江「私はね・・,此処に住みに来たのは10年前ぐらいかしら・・。

私が勤めているのは此処の病院の医師と支援事業の役員ってとこね。」

 

 

春美「それって・・,この病院だよね・・。

こんな風になったのは貴方も気の毒じゃ・・?」

 

 

幸江「そりゃあ気の毒よ。 こんな不幸に遭ったのはこれで何回目かしらねぇ・・。

実は私・・・ 養子がいたのよ。」

 

 

春美「養子がいたの・・?」

 

 

幸江「亡くなった姉の息子で私が引き取った。

私が此処に住んだ時は26歳位になってたかしら・・。」

 

 

春美「息子は今,何処にいるんですか?」

 

 

幸江「息子は8年前に亡くなっているわ。

商店街の横断歩道で渡った時に交通事故に遭ったの。

その加害者が飲酒でしかも轢逃げよ・・。」

 

 

春美「 (聞くべきじゃなかったかな・・)」

 

 

幸江「その加害者は後に逮捕された・・・。 だが,それで私は終わらなかった。

ずっと思っていたの・・,世の中は無法で身勝手な連中ばっかり。

これで今の子供達に未来はあるのかしら? 私の養子だってそうよ。」

 

 

春美「・・・・・。」

 

 

幸江「私はずっと心の中で決めたの,養子を含め子供達の未来のために,

どんな手段を使ってもより良い環境を作っていくためにねww」

 

 

良い事言っているみたいだが,笑いながら喋るのは

印象的に悪く見えても当然である。

 

 

幸江「それに手荒な手段でも未来に繋がると考えているわww」

 

 

春美「あのちょっと落ち着いた方がいいんじゃないですか?

手荒だったら,返って他方から迷惑が掛かってくるのでは・・。」

 

 

幸江「子供達と養子の事をどう思っているのよ!!

 

 

春美の言葉に何故か逆上してしまった。

 

 

幸江「はっ・・,つい荒くなってしまったわ。 ごめんね。」

 

 

幸江「 (何だろ・・,急に狂っている様な気が・・) 」

 

 

そんな時だった。 春美が登った階段から修平が上がってきたのだ。

 

 

修平「おーいっ 一体誰と会話しているんだ?」

 

 

そう言いながら,階段を上りきった修二。 どうやらグレイドに勝った様だ。

 

 

春美「無事だった?」

 

 

修平「じゃなければ、会ってないよ。 何とか追い払った。

・・・それに何で幸江さんがこんなところに?」

 

 

幸江「あぁそれはね・・ (此処に来た経緯を話す) 」

 

 

修平「はぁ・・ 成る程,心配して此処に来た訳なんだ。」

 

 

幸江「そう・・。 私が先に着いた時,階段から来たのは春美さん一人だったから,

修平君はどうなったんだろうと思っていたわ。」

 

 

修平「春美は俺の事を喋ってくれなかったかな・・?」

 

 

春美「えへへ・・,まぁ長話は終わりにしましょ。」

 

 

修平「そうだな。 じゃあ行くぞ。」

 

 

幸江「私はここで待ってますからね・・,無事に来る事は祈ってますから・・。」

 

 

春美と修二は薄暗い病院の中へ入って行った。

 

 

幸江「ウフフフ・・,そう簡単に出れるかしら。」

 

 

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〜 鶴来市立医療大学病院・裏口 〜

 

森の茂みからグレイドが出てきた。

修平との戦いで敗れたためか懲りもせず,また追ってきたのである。

 

 

グレイド「今度こそ,まとめて仕返ししてやる!」

 

 

ドーン!

 

 

裏口の扉を派手に蹴破り,建物の中へ入って行った。

 

 

この後,彼は思いも寄らぬ展開に遭遇する。

 

 

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〜 病院内部 〜

 

一室のトイレにて。 そこに一人の清掃員が持っている

スクイージーを磨いていた。 本来なら清掃用のブレード部分はゴム製であるが,

彼のスクイージーのその部分には血塗られた刃が付いていた。

彼もこの街を破壊する者達の仲間であり,狂人である。

 

 

ドーン!

 

 

裏口の扉から蹴破る音に気付いた狂人は顔を上げた。

 

 

狂人「何だ・・。 こんな静かなところで大きな音を立てる奴は・・?

そんな腐った奴は俺が徹底的に磨いてやろうww」

 

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