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雄吾「グオオォォォー!!」

 

 

幾多の攻撃を受け,痛みに耐えられなくなったのか顔を上に向け,雄叫びを上げた。

まるで巨大な怪物が吠えているかの様なものである。

 

 

その様子を止めを刺す好機だと感じた春美は杖を雄吾に向けて構えた。

 

 

春美「よしっ 今だ!」

 

 

グサッ!!

 

 

春美は自身の杖で雄吾の胸を思い切り刺し,彼の背中を貫いた。

 

 

修平「とどめだ!!」

 

 

ザクッ!!

 

 

修平も春美と同様の行動に移した。修平はスコップを上に上げ,雄吾の頭部に向かって大振りで殴った。

雄吾の脳内まで深くは入り込む程の威力だ。

 

 

雄吾「ギャアアアアーーーーー!!!!

 

 

二人の一撃必殺によって雄吾は苦悶の満ちた顔でよろよろと後退し始める。

 

 

刺された春美の杖はそのままポロリと抜けて地面に転がり落ち,春美は直ぐにそれを拾う。

 

 

雄吾は痛々しい表情のまま,修二達に向けて片手からビーム砲を撃ち出そうとする。

しかし,彼の背後は既にダム上の端にまで後退していた。

 

 

雄吾「うっ・・ うわあああぁぁぁぁっ!!!

 

 

雄吾は足を滑らせ,そのままダムの真下で落下。 真っ逆さまの状態で…

 

 

ズドォォーーーーン!!

 

 

ダムの真下にある岩場に叩きつけられた瞬間,雄吾の身体から凄まじい爆発が起こった。

体内に溜め込んでいたであろうエネルギーが凄まじい衝撃で暴発したからだ。

 

 

その際に噴出した爆炎は瞬く間にダムの上に越した。 爆発による煙が薄まった後,

修平達はダムの下を覗いた。 その下は既に爆発で崩れた岩の破片と樹木に混ざり合った瓦礫の山となっていた。

 

 

修二「…こんな事をしてよかったのだろうか?」

 

 

複雑な心境で雄吾と戦い,そして倒した。 これで全てが終わったかに見えた。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

 

春美「うわっ 何なの!」

 

 

ダムが突然揺れだした。 雄吾との戦いや,さっきの爆発による衝撃で,

ついにダムが耐えられなくなったのだ。 ここにいては,崩落に巻き込まれてしまう。

 

 

修平「くそっ こっから離れるぞ!」

 

 

二人は急いでダムから離れ出す。

 

 

・・・ついに

 

 

ドドォーーーーーン!!

 

 

ダムが崩れだした。 さらにそれに溜め込んでいた水が決壊により,

街に向けて流れて行ったのだ。

 

 

春美「ダムが崩れた・・・。」

 

 

修二「歯痒い気持ちだ」

 

 

無事に崩れるダムから逃げ延びた二人。 しかし,ダムの崩れる様を二人は呆然と見詰めた。

 

 

ババババババ・・

 

 

プロペラが周る音が聞こえた修二は空を見上げると,

あそこに警察のマークが付いた1機のヘリが,修平達の近くで着陸した。

 

 

ヘリの扉が開くと,そこから警察の人であり治安部隊のリーダーが出てきた。

それに気付いた修平達はヘリに振り向く。

 

 

治安部隊のリーダー「大丈夫か? 君達・・」

 

 

修平「警察の方ですか?」

 

 

治安部隊のリーダー「あぁそうだ」

 

 

治安部隊のリーダーは二人を安心させる。

 

 

治安部隊のリーダー「ダムの方で何か爆発音が響いてな,此処へ向かったんだ。

そしたら君達の戦うところを見てね」

 

 

修平「・・・・」

 

 

治安部隊のリーダー「 ( それにしても子供にしては今までにない中々の実力だ。

しかし最悪の展開を迎えてしまうとはな・・。 ) 此処は危険だ。とにかく君達,ヘリに乗るんだ」

 

 

修平達は警察のヘリに乗り込み,その場から空へと飛び立った。

 

 


 

〜 鶴来市上空 〜

 

治安部隊のリーダー「こちら治安部隊。 子供二人を無事救助した」

 

 

治安部隊のリーダーは通信機で応答をしていた。

 

 

治安部隊A「最悪だな・・・,街のほとんどがよ」

 

 

治安部隊Aはヘリの窓から街全体を見渡した。

街の殆どはダムから流れた水に浸していた。津波がここまで達したと思わせるぐらいの被害だった。

 

 

修二も虚ろな目で街の悲惨な状況を見ていた。 直ぐに背けてしまう程だ。

春美は気が落ちた修平に話しかけた。

 

 

春美「修平・・ 元気出して」

 

 

修平に気に掛ける春美だったが,当の本人の己の未熟さに心を痛める。

 

 

治安部隊のリーダー「君達・・ 窓を見てくれ。 街の人々がヘリに向かって手を振っているぞ。」

 

 

修平と春美は窓の方を振り向く,被害が及んでいないところから避難した人達が手を振っていた。

その中に,市長やその職員もいた。 手を振っている事から,誰かを迎えている様だ。

 

 

春美「みんな無事だったんだ。」

 

 

この後,ヘリはその場で着陸をした。 修二と春美がヘリから降りると,街の人々は

無事である彼等の姿を見て大喜びをする人もいた様だ。

 

 

そんな中,ヘリから降りた直後,二人はいつの間にか手を軽く繋いでいた。

出身校が別々で,知り合い関係の修二と春美。 これがきっかけで,

お互いの気持ちを合わせた内に自然に二人の距離が短くなっていたのであろう。

 

 

これで事件は終着をしたのである。

鶴来市で起きた惨劇は正男が住む街等で広く認識される様になった。

ただ報道の内容ではこれ等の出来事には修二と春美の名前は載らず,

警察や軍の駆けつけによって終息した形となっている。 これは修二と春美の願望によるためである。

 

 

その理由は元の静かな学校生活を送りたい事と,英雄になろうとは思っていないからである。

 

 

数ヶ月もしない内にこの事件は忘れ去ったのである。 

 

 

・・・・が

 

 

 

〜 ダムの下 〜

 

修二達からその場から離れて3時間後・・

 

 

ダムの下では崩れた岩の破片や倒れた木々で河川が埋もれていた。

 

 

静観を保っていたこの場所で異様な空気が走る。

それは崩れてきた一つの大きい岩に微かな揺れが動いていた。

時間が立つつれに揺れが大きくなり,やがて岩の下部からヒビが入っていく。

 

 

バーーン!!

 

 

ついに大きな岩が割れた。

 

 

ドーン!!

 

 

そこの岩の隙間から何かが出てきた。

 

 

 

 

 

 

それは雄吾の片手だ!!

 

 

 

 

 

 

CRAZY CRUSHERS 

 

THE END

 

 

 

 

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