ストーリー

 


~ 高級温泉旅館・通路 ~

 

力彦「そういやここ・・・、高級温泉旅館だったらしいな。

ここでも温泉パスが利くらしが、すげぇな」

 

 

彼が言う温泉パスとは、下山市が観光客誘致策として発行されているカードの事である。

それを持っていれば、市内にある温泉で料金を割引してくれる。

施行後、観光客が着実に増えてきており、その効果は順々に現れてきている。

 

力彦は今後、この街に訪れる時は役所に再び立ち寄り、カードを発行させてもらおうと考えている。

 

 

力彦「むっ?」

 

 

彼が風呂への入り口の前で立ち止まった。 彼の顔が横に傾いた。

彼の視線に映っていたのは自動販売機。

商品として売られている物は牛乳、フルーツ牛乳、コーヒー牛乳といった乳製品であり、

入浴後には丁度良い。

 

だが、自動販売機の表面ガラスは暴走ロボットの襲撃のせいか、ガラスが破損している状態であった。

にやけた顔をした力彦は自動販売機に近づいた。 そして、何を思ったのか、自らの手でガラスの奥へ突っ込み、

コーヒー牛乳を取り出した。

そして、蓋を開け、それを一気に口の中へゴクゴクと飲み始める。

 

 

力彦「こりゃーうめぇな! どうせ、これらは商品にならないからな」

 

 

彼の思考によると、この自動販売機は被害を受けている。

その為、全ての牛乳は売り物にならず、そのまま廃棄されるだろう。

だから、勿体無いと思い手を出したのである。

だが、結局その行為は万引き寸前に等しい事であるが・・・

 

 

力彦「ごちそうさん」

 

 

力彦は飲み終えた空っぽの牛乳瓶を、専用のカゴの中へ置き、

そのまま風呂の入り口に入り、風呂場へ向かって行った。

後、これを見ている読者はこの行為を真似しないように頑なに願う。

 

~ 露天風呂 ~

 

室内の風呂場を過ぎ露天風呂へ抜け出した力彦は階段を下りようとした時、

迂闊にも足が滑り、階段から転がり落ちた。

 

 

力彦「いってぇ! 何だこの階段、欠陥か?」

 

 

その階段は濡れていた。 しかし、力彦はそれを欠陥と突きつけてしまった。

 

 

力彦「まぁいい、この機に折角だから裸になって露天風呂に入っちゃおっかな。

俺以外、誰も見ていないんだしさ」

 

 

非常事態にも関わらず、寧ろそれに乗じてタダで入ろうとする力彦。

彼が上着を脱ぎだそうとしたその時・・・

 

 

ザバァーーン!!

 

 

突然、湯船から水飛沫が噴き上げる。 これに気づいた力彦は、上着の襟部分から顔を出し、湯船の方へ向ける。

 

この時、水飛沫の際に出た分厚い湯気で覆われていたが、その中に人の形をした黒い影が映っていた。

やがて、横から吹く風で湯気が払われ、ようやく前方が確認出来るようになった。

 

その人の形をした黒い影の正体は、サムライ型の大型ロボット。

赤と青を基調とし、両腕に手が無い変わりに、二本の日本刀を取り付けられている。

刃先の先端から光が輝き、それが鋭さを強調しているようだ。

 

ロボットの視界が力彦に映ると、二本の刀がブンブンと周囲を振り回す。

偶然にも屋根を支える一本の分厚い柱が刀に切り倒された。

一振りで切り落とすその刀は、かなりの切断力があるというのが分かる。

 

ロボットは目から赤い光を放ちながら、徐々に力彦に近づいていく。

 

 

力彦「おっやる気か? こういう奴は、久しぶりのやり甲斐が沸いてくるぜ!」

 

 

力彦はサムライ型のロボットの獰猛に屈しなかった。

その辺でタダひたすら暴れるだけで雑魚に等しいロボットよりも、骨のある戦いが来ると思い歓迎していた。

 

彼は此方へ近づいてくるロボットに対し、戦闘の構えを取った。