ストーリー

 

~ 寺 ~

 

ロボット「ウガアアア!!」

 

 

猛獣が吠える様な声を発しながら、拳を力彦に向けて殴りかかるが、

力彦はサッとかわし、拳は床に叩きつける。 この時、木製の床に穴が開き木片が辺りへ散らばっていく。

 

 

力彦「こっちに来いよ!」

 

 

猛威を振るう金剛力士像ロボットに、力彦は薬指を曲げて挑発する。

ロボットはそれに乗るかの様に、拳を握り締め力彦に再び襲い掛かり、ある程度近づいたところで、

拳を下にいる力彦に向けて叩きつける。

 

 

力彦「俺の挑発に乗ったみてぇだな!」

 

 

少しにやけた表情で振り落とす拳を避け、拳が床の下へ突き抜けさせると、一気にロボットの腕の上に飛び移り、

そのままロボットの頭部まで登って行く。 そこに辿り着き、持ってた力彦特製の棒状のスタンガンを取り出す。

それをロボットの両目に向けた。

 

 

力彦「目潰しをくらいな!」

 

 

そう言うと、ロボットの両目にスタンガンを突いた。 鋭い火花と共に、ロボットの両目が破損し、

怒気に満ち溢れていたロボットは視界不良に陥り、そのままヨレヨレの状態になる。

力彦はさらに深追いをし、ロボットの頭部を片手で持ち、自身が飛ぶ同時にロボット押し倒した。

 

床に倒れたロボットの背中を力彦が乗り上げた。 彼の視点にはロボットの背中に小さな戸があった。

その戸を強引に開けると、中には数十本のコードや機器が詰め込まれていた。

それはロボットの配電盤の一部であった。

 

力彦はスタンガンでコードや機器にガンガンと何十回も突き刺した。

物凄い火花を散らし、配電盤はショート。 ついに金剛力士像ロボットは完全に停止した。

 

 

力彦「怖くてデカイだけじゃ、そこら辺のチンピラとは何の代わりもねぇな」

 

 

ただのガラクタと化したロボットにそう酷評する力彦。

その顛末を見たロボットの召還主、和郎は、満足そうな笑みを浮かべ尚も力彦を見下ろしていた。

戦いを終えた力彦は視点を和郎に向けた。

 

 

和郎「流石、喧帝よ。 力の面では伸し上がっているみたいだな。」

 

力彦「次はテメェだ! とっとと降りてきやがれ、コテンパンにしてやるからよ!」

 

和郎「フッ、良いだろう。 でもな、決戦を迎えるのは早過ぎだと思わないか?

俺の考えでは、もっともっとお前を楽しませたい。

力彦よ、山の天辺にある城のとこまで来い。 そこで決戦を行う。

 

力彦「はぁ? 待ちやがれ!」

 

 

そう宣言すると、自身の刀で天井に向けて何回も振り払うと、天井の板が切り裂かれた。

天井が消失しそこから夜空が見えると、和郎は空に向かって寺から抜け出した。

力彦は何としても捕まえたかったが、落ちてきた天井の板の破片を避けていた為、その余裕は無かった。

そして彼の視界に和郎の姿が見えなくなると、溜め息が付きその場で座り込み、両手を顔に強く当てた。

和郎に傍若無人の振る舞いにイライラしている為だ。

 

暫くその状態が続いたがようやく落ち着きを取り戻していく。

 

 

力彦「ちっ 仕方ねぇ。余計に溜まった鬱憤をあそこでぶつければ良いだけの事だ」

 

 

力彦はゆっくりと立ち上がり和郎にいる城へ向かう為、寺から抜け出していく。

・・・と、その前には力彦は住職や僧侶、観光客が魅了する最も立派に輝いていると言われる

金剛力士の像のところへ近づいて行く。

 

 

力彦「訪れた記念にと・・・」

 

 

力彦は持ってた油性ペンで像の右足に自分のイニシャルネームを付けるという

不届き者に相応しい行いをしてしまったのである。

彼は正義の味方としての自覚は無い。 とは言え、してはいけない事はしてはいけないのである。

 

そんな彼は気にもせず、この寺から去っていくのであった。

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

~ 寺・入り口前 ~

 

力彦「くそっ、奴が城に登って来いって言ってたな」

 

 

来た道から抜け出した力彦。 丁度、自身の携帯電話から着信音が鳴り響き、

それを出して電話をかけた。 相手は彼と協力する市の職員であった。

 

 

職員の声「力彦さん無事でしたか?」

 

力彦「あぁ、そっちも大丈夫みたいだな。 アンタの言ったとおり、野郎は寺の中にいた。

捕まえたかったが、そうはいかなかった。 城の方に逃げちまったらしい」

 

職員の声「城ですか・・・? あぁ確か、山の天辺にありますね。 場所は貴方から数キロ離れたところに稲荷大社があり、

その奥へ進んでいく行くと山道があります。 そこが城への近道になります」

 

力彦「そんな道あったけな? 地図には記されてないが」

 

職員の声「それは、林業用として使われる道なんです」

 

力彦「おぉ、そりゃあマル秘情報ってやつだな。 サンキュー、時には頼りになるな」

 

 

 

 

小さな疑問に納得した力彦は電話を切り、すぐさま城へと続く道があると言われる場所、

稲荷大社へ向かって行くのであった。

しかし、和郎とはまた別の存在が力彦の心身を揺さ振ろうとする動きが出始めようとしていた。

 

それが次第に迫ってくるのは当本人も知る由も無い・・・

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

~ ??? ~

 

再び、場面は大理石の床と光が射す巨大な窓のある静粛とした部屋に移る。

一人の男は机の前の椅子に座り、両手を軽く握り締めながらじっと佇んでいた。

 

丁度、スマートフォンの電子音が鳴り、男は静かにそれを取り画面に軽く指を押すと、

そこに静止画が映し出された。 その画像に睨んだ目つきで立つ男がいた。

 

その男はなんと力彦だった。

 

そして、その静止画の下の文字に時刻と撮影場所が記されていた。

場所は下山市にある寺であり、この時は力彦が和郎を一時的に追い詰めていたところである。

 

 

???「やはり、あの御曹司か。 だが彼は過去を知らない。

これは興味深いし、そして検討すべきところだな」

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

 

 

 

~ 稲荷大社 ~

 

稲荷大社は下山市北部に位置しており、他方から来た多くの観光客は参拝に訪れており、

初詣等の正月の時期は他のシーズンでは最も混むとされている。

建造物への道には大小様々の鳥居が均等に並んでおり、そこが市のメインシンボルとして知られている。

この地の特徴からか、読者にとっては日本のある場所を思い起こさせるものである。

 

有名な観光地であるが、この日はロボット暴動という異常事態に入っている為、

訪れた者は唯一人、それは力彦だった。

 

 

力彦「ここか、すげぇな先の先まで鳥居があるぞ。 誰もいねぇから、此処はのんびりと歩いて・・・」

 

 

散策しようと思っていた力彦。

しかし、和郎の事を思うと悠々とした気分は心の片隅まで一気に振り払った。

今は決戦に向かう為、この道を通ろうとしているのだ。

 

 

力彦「いけねぇいけねぇ! 和郎をぶっ倒すという宣誓を忘れるところだったぜ・・・。

じゃあ行くか、待ってろよ和郎!!!」