RB技術工芸大学…

 

 

この大学の名前を覚えているだろうか?

 

 

この大学は、カナリアシティという地方の都市で山々に囲まれたところにある。

そこではロボットや機械等、高度なテクロノジー技術を主要科目としており、

多くの技術者を輩出している。 そのため、多くの企業から当大学に投資を行っている。

 

 

だが、その華やさに裏があった。 それは、役に立つと思われない学生の切捨てだった。

元学生からの証言で事実となっており、大学の他愛の無い姿勢が前面に出された。

 

 

それが原因で、一人の元学生が復讐の為に大学に留置されていたロボットを暴走させ騒乱を起した。

挙句の果てには近くの軍事基地で危険兵器として厳重保管していた凶暴なロボットを起動させるまでに至った。

幸い、ロボットに対抗する人が現れ、寛大な被害が出されずに済んだ。

 

 

現在、大学は元通りになっているが、学生の扱いによる問題が解消されておらず、

学生を初め企業や政府からも問題視される様になった。

 

 

 

 

 

 

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~ 工務店 ~

 

午後5時頃・・・、辺りの空は一面夕焼けで広がり、

光り輝く太陽も地球の裏側に向かって沈みかけている。

 

 

都市と都市を結ぶ郊外の国道沿いで一軒の2階建てのコンクリート製の建物が建っていた。

2階で割れた部分にダンボールで貼られた横開きの窓の下に『力彦工務店』という看板が垂れ下がっていた。

この建物は電気設備の工事を重点に行う店である事が分かる。

 

 

店のガレージには木箱が置いてあり、そこに一人の男性がタバコを吸いながら座っていた。

『安全第一』のステッカーが貼られた黄色のヘルメットを被り、灰色の作業服を身に着けている。

彼の名は力彦。 『力彦工務店』の店主である。 従業員は彼のみであり、自営業だ。

その為、設備工事や点検のみならず会計や店内の掃除まで全て彼が行っている。

 

 

タバコで一服をしている中、二階の事務室からプルル音が聞こえてくる。

力彦はその音が何なのか理解していた。 何故ならあれは電話機のファックスの届けの知らせである。

吸い終えたタバコをコンクリートの床に落とし、自分の片足でグリグリと踏み潰した後、直ぐに二階の事務室へと向かう。

 

 

事務室に辿り着いた彼は面倒臭い表情しながら電話機に近づく、電話機の下部から出たファックスの紙を取り出した。

この時、強引に引いてしまった為、一部が破れてしまった。

力彦はファックスの紙に書かれている内容を読んだ。 それはとある市役所からの依頼書であった。

 

 

力彦はその内容を読んだ。 交通管理システムの配電盤の修理であった。

交通管理システムとは、信号機等の道路設備への送電を中心に行われている。

しかし、それが故障すれば電力の供給が停止、交通状況の支障がきたしてしまう。

 

 

その知らせを受けた力彦は口笛を吹き、修理用の機材を持ちながら、車の中へ乗り込んだ。

車のエンジンを噴かせると同時に発進、勢いよく店外へ飛び出し、右へ急カーブした。

この時に左の方から車が来ており、突如店から飛び出た力彦の車に驚き、急停止。

車は、向こうへ去る力彦の車に向けてクラクションで怒鳴りつけるしかなかった。

 

 

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~ 下山市・温泉街周辺道路 ~

 

力彦が辿り着いた所は下山市という山間に囲まれた街であり、人口はそれ程多くは無い。

その反面この地では多くの源泉が湧き出しており、街のあらゆる場所で温泉施設が建ち、

雑誌で掲載する程の有数の温泉街として有名である。

力彦もこの街の事を、後で温泉に立ち寄ろうと思う程、認知している。

 

 

本来、力彦の店と下山市との距離は遠く、遠方で仕事を行うのは彼にとっては初である。

遠方から修理の要請を受けるようになったのは、恐らく力彦の修理の腕利きの良さが広まったのであろう。

 

 

市街地の中を進み、ようやく修理すべき配電盤のところへ辿り着く。

 

 

力彦は車を止め車外へ降り立ち、修理機材を持ち込んで配電盤のところへ向かう。

配電盤の前に来た所で、身体を屈み込み作業を始める。 

15分ぐらい立ったところで、ようやく修理が完了する。

壊れた部分の補強と切れたコードを再び繋げただけであるが、これは暫定的な修理であり、

新しい配電盤が交換されるまで、その間の措置として取っている。

 

 

修理を終え、額から流れる汗を自分の作業服の左腕部分で拭き取った後、

車に乗り込み、街の外へ出て帰宅する。 ・・・では無く、役所へ向かう。

修理完了の報告と同時に、工賃を受け取る為である。

 

 

~ 市役所 ~

 

車を駐車場に止め、役所に入る力彦。

下山市は和風の温泉街であるが、役所の建物は無機質のコンクリートで築年数は数十年過ぎている。

老朽化が進んでいる為、数週間後に別の場所で新しい役所が建築され、全ての業務が新しい役所へ移した後、

この建物は解体工事が行われる。

 

力彦は、古びた長いテーブルの前に立っていた。 そこは受付である。

テーブルの上に置かれていたベルを彼が鳴らすと、職員が向こうの仕切りから出てきて、

此方へ向かってくる。 この職員が修理の依頼人である。

 

 

力彦「よぉっ! 修理は終わったぜ」

 

職員「流石ですね。 偶然、ネット上で貴方の店の広告を見たんですよ。

"値段安く、しかも修理時間が早い"というキャッチフレーズ。

騙されたと思って頼んでみましたが、その甲斐がありましたよ」

 

 

職員が小笑いしながら依頼金を渡す。 力彦はそれを受け取った。

 

 

力彦「ちょっとそれは失礼じゃないか?

まぁ俺んちの店はまだ開設し立てなもんだから、そう言われてもしょうがないな」

 

 

力彦が運営する工務店は開業から1年も立っていない。

少しでも自身の店の存在を広める為、ネット上で広告を行っている。

 

 

力彦「それにしても、俺が修理したやつなんだが、何故故障を起したんだ?」

 

職員「無人の自動小型宅配車が突然暴走して追突したんですよ。」

 

力彦「ありゃま、誰も乗らず自動で動く車が事故を起こすだと?

おいおい、それってちゃんと点検したんかい?」

 

職員「持ち主によると、毎日点検しているそうです。

自動車製造企業がRB技術工芸大学と共同で開発した車なのに、事故を起こしたら信頼ガタ落ちですね」

 

力彦「あの大学・・・」

 

 

"RB技術工芸大学" その言葉を聞いた時、力彦の気楽な表情は一変、無表情に変わる。

何かに脳裏に焼きつきながらその場で硬直した。

 

 

職員「どうかされました?」

 

力彦「いやっ、なんでもないよ」

 

職員「そうですか。 しかし、事故以前からあの大学は信頼性の損失は半端無いですね。

それだけでなく、大学に出資したUNTにまで及んでるそうですよ」

 

力彦「・・・!?」

 

 

力彦は再び硬直した。 UNTという言葉を聞いた為だ。 それは彼にとっては今でも忘れられない名前であった。

UNTは最先端技術を駆使し、あらゆる物を開発する技術系の会社だ。

地方の彼方此方で支部が設けるほどの大企業であり、社会的な貢献を果たしている。

しかし、ここ最近この会社では不祥事や事業の損失等、様々な問題を抱えており内外において不満が高まっている。

 

 

職員「そのUNTですが今日、団体旅行でウチの街に来られてるんですよ。

今の時間帯ですと、もう旅館にいると思うんですがね・・・」

 

力彦「UNTね・・・」

 

職員「あれっ、何か不満があるのですか?」

 

 

職員が力彦のやるせない表情みて、迂闊に喋ってしまった。

 

 

力彦「いやっ、本当に何でもないよ」

 

職員「あぁそうですか。 では、修理して頂き誠に有難うございます。」

 

 

職員から御礼を受けた後、力彦は工賃を手に役所から出て行った。

 

 

~ 市役所・駐車場 ~

 

力彦「久しぶりに聞いた名前だが、何だがやるせないぜ・・・」

 

 

そう呟き、車に乗り込んだ。 

彼にとって、UNTとRB技術工芸大学という名前は聞きたくは無かった。

その理由は不明だが、彼はその二つに関し、何を思っているのだろうか。

 

力彦は車を動かし、市役所を後にし、自分の店は帰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

・・・筈であった。

何故なら、平穏であるこの街に

あの惨劇の光景が迫っているのだから

 

 

 

 

 

 

THE CYBER ERROR 

 

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