~ 高級温泉旅館・露天風呂 ~

 

風呂場から突如現れた二刀流の侍ロボットと交戦する力彦。

 

 

力彦「オラオラオラーー!!」

 

 

ロボットが刀を振り落とす直前に力彦は果敢に突進し、自分の両足で

腹部に連続蹴りを食らわせる。

彼の行為は果敢なのか無謀なのか定かではない。

 

連続蹴りを受けたロボットが衝撃で体制が崩れ、ヨロヨロになりながら後退り、

そのまま露天風呂に倒れて着水する。

 

それを見た力彦は「おぉー!」と威勢を上げ、露天風呂に向かって高く飛び上がる。

着水したロボットは湯船から上がろうとするが、力彦の猛烈な攻撃による損傷で外部の板が

剥がれており、そこから温泉水が内部の機器に染み込んでしまい、動作不良をきたしており、

立ち上がる事が出来ないどころか、身動きが取れない。

 

飛び上がった力彦は今、ロボットの上におり、彼の右手で強く握り締め、

ロボットの腹部に強烈な拳の一撃を与える。

 

拳を食らわせ、ロボットは衝撃に耐え切れず、「ギギギ!」という

唸り声を上げ風呂場から爆散、噴水のように吹き出た温泉水とロボットの部品で

場外へと撒き散らす。

 

電気工事士の露天風呂での激戦はここで締めを括らせたのである。

 

 

力彦「思ったんだけど、アイツ等は何処から来たんだ?

何の為に破壊を・・・」

 

???「流石だなクソ坊主、大刀を持つロボットに武器を持たずに打ち倒すとは」

 

力彦「あぁ、誰だテメェ! それに、誰がクソ坊主だゴルァ!」

 

 

何処からか人の声が聞こえ、クソ坊主と言われ逆上した力彦は声のした方へ振り向く。

向いた先は夜空だが、そこに一人の男の姿があり、その男は彼を見下ろしていた。

 

その男は足場になる物の上に立っておらず、空中を浮遊している。

 

 

力彦「コイツ、ひょろそうな身体しながら空を飛んでいやがる!」

 

???「暴れ猿め! 俺の身体にそんな事を言うとは。

そんな奴は天誅が必要だな。 だが、今はそんな事をしている暇は無い。

ここでやるべき事をしてから、再びお前の下に来るとしよう」

 

 

そう力彦に報復宣言を言い放った後、そのまま何処かへ飛び去って行った。

 

 

力彦「くそっ、それはこっちの台詞だろ? 俺の車はスクラップにしてさ」

 

 

力彦は何処かへ飛び去る謎の男の姿が見えなくなるまで、

睨みながら見詰めていた。

 

 

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~ 市役所 ~

 

場面が変わって、この街の役所。

力彦が修理の依頼で訪れた時は平凡で静かな雰囲気が漂っていた。

しかし、今はここでもロボットの群の襲撃で内部が荒れ果てていた。

書類が床に散乱、照明灯が壊れ片方が垂れ下がってる等、被害は様々だ。

 

そこに役所の職員が落ちた書類を拾いながら、彼方此方を回っていた。

職員がロボットの襲撃に愚痴を零しながら作業を続けていると、入り口から力彦が入って来た。

 

 

職員「あぁ君かい・・・ ロボットに恐れて街の外へ逃げた筈では?」

 

力彦「ムカついたから、ロボットに売った喧嘩を買ったよ。

ところでアンタ! 信じられねー事かもしれねぇが、俺は見たんだ。

露天風呂で男が空を飛ぶところをよ」

 

職員「はぁ? 」

 

 

露天風呂で空を飛ぶ男を見たという証言に職員は驚いた。

このまま戸惑いを見せると思われたが・・・

 

 

職員「ひょっとして、貴方は生で目撃したんですか?」

 

力彦「おやっ? 意外と信じてくれるんだな」

 

職員「実は此処で併設する警備監視センターの監視カメラから得た画像に、

ある人物の姿が映りまして・・・」

 

 

職員は目撃情報を伝えると同時に、力彦を警備監視センターへ連れて行く。

 

 

~ 警備監視センター ~

 

職員の案内の下で辿り着いたのは、役所の隣で併設する仮設感が漂う小さなプレパブ小屋だった。

建物の中に入ると、そこには数十台の液晶モニターが並んでいた。

街のあらゆる場所に点在する監視カメラから得た映像はこの場所で映し出される。

 

 

力彦「( 工事の作業員の寝床場所みたいな建物だな・・・ )」

 

職員「力彦さん、これなんです」

 

 

職員は一台のモニターに指を刺す、

そこに映っていたのは、力彦が露天風呂で目撃したあの男の姿がいた。

 

 

職員「警察の方々にこの映像見せ、調べさせたところ、ある人物の名前が挙がりました。 

その名は和郎職業はバスの運転士。 彼は一週間前に行方不明になっているんです。」

 

力彦「ほぉ・・・、その辺で走ってるバスの運転士が街の破壊をしているって訳か。

何でだ・・・、渋滞とかでストレス溜まっちまってムシャクシャしてこうなったのか?」

 

職員「力彦さん、彼は空を飛んでるんですよ。 そんな事言ったら、空が人まみれですよ

 

力彦「そうだな、かなり非科学的だった。 ・・・ところでさ、俺はそいつを追いたいんだ。

俺を見下ろす様な癖を見せてな、しかもバスの運転士だろ? 余りにも気に食わんぜ」

 

職員「彼を?」

 

力彦「あぁそうだ。 そいつの映像は露天風呂を後にした最新の映像だろ?

奴は今、どの方向に向いているんだ?」

 

職員「映像から見ると、彼はの方に向かっていますね」

 

力彦「よっしゃ、絞め殺しに向かうか」

 

職員「寧ろ捕まえてくださいよ。 事情を聞かなければならないんですから」

 

力彦「冗談を言っただけだよ」

 

        

 

力彦は軽く言い返す。

 

        

 

力彦「俺はこの場から出て行くが、アンタはどうするんだ?」

 

職員「私は、和郎という人の行動をこの無数のモニターで把握出来ます。

ですので、それを貴方に伝える役目の為に此処に残ります」

 

力彦「あぁそうか、ありがたいな。 何かがあったら、連絡宜しくな。

それにロボットには気をつけな」

 

職員「貴方もですよ力彦さん。 やはり縁が芽生えてきていますよね」

 

力彦「あぁ、俺はそういう系が苦手なんだよなぁ・・・

 

 

力彦は気まずそうな顔しながら小屋から出て、

和郎が向かっていると思われる寺へ向かって行った。

 

        

 

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