~ 天守閣・屋根上 ~

 

満月から出る光が城全体に照らされる中,自営業の電気工事士と暴走ロボット投入の張本人が

屋根の上で激闘を繰り広げていた。 今まで戦ってきたロボットは比較にならない。

力彦は城の周辺を飛び回る和郎を睨みながら好機を伺う。

 

 

和郎「どうした? 打つ手が無いのか? どうやら一桁越えた俺に翻弄されているようだな」

 

 

そう宣言すると身体を逆さまに半回転し,その状態で一気に急降下,そのまま直線は曲がり出す。

その先に立つ力彦に向けて,低空と高速飛行で胴体切りに掛かる。

 

余りの俊敏さに追い詰められていく力彦。

 

 

・・・だが,ここである事に気づく。

 

 

力彦「( コイツの両脇に歪みが感じる・・・ ) 」

 

 

和郎の両側には見えない筈の"そこ"が歪んでいるのだ。

何かがあると確信した力彦は勝利への快進撃を思いつく。

 

和郎が斬りかかろうとする直前に力彦は仰向けになって倒れる。

このタイミングであれば,和郎の攻撃を回避が可能であるが,それが彼の意外な策だった。

 

和郎が力彦の真上を通り過ぎようとした瞬間,スタンガンを取り出し片側に向けて突く。

見えない何かにガリガリと削れる音が響き,火花も散らす。

 

 

和郎「おっおおおおぉーーー!!」

 

 

和郎はよろめき出した。 同時に両側ではある物体が露になる。

 

 

力彦「成る程な。 お前の事を少し悟っていたが,やっぱりそういう事だったか」

 

 

和郎の空へ浮遊する力の正体は,両側に一基ずつ付けられた黒色の小型噴出ジェット機であった。

またステルス処理が施されており,機体を透明化させる事が出来る。

彼はそれを背負い,"浮遊する力を持つ男"として力彦に偉そうな顔面をして対面したのである。

 

和郎の並みの剣術とジェット機で力彦を翻弄させていたが,力彦が存在を感じ取ってしまい

あっという間に形勢逆転を生んだのである。

 

機体不良を起こし飛べなくなった和郎は,グルグルと回りながら高度が徐々に低下・・・

 

 

バシャーーン

 

 

ついに城の庭園にある池に到達,そのまま水飛沫を上げて墜落した。

 

 

力彦「しょうもないカラクリだったとは言え,火の臭いもしなかったし,それの轟音すらしなかった。

でも熱気は感じ取った」

 

 

和郎の両側の見えないところに歪んでいたのは,どうやらジェット機の噴出炎が出る熱気だった様だ。

 

 

力彦「これもまた技術の進歩ってやつかねぇ・・・」

 

 

小型ジェット機の技術に感銘しながら,城外に向けて降りて行くのであった。

 

 

~ 城外・庭園 ~

 

屋上から降りて行き城へ出た力彦は直ぐさま庭園の池へ駆けつける。

岸辺に辿り着くとそのまま池に飛び込み,水面上で気絶している和郎を掴み再び岸辺へと上がって行く。

未だに仰向けの状態で気絶している和郎を横目に地面にゆったりと座り込む。

 

 

力彦「しかし、和郎という野郎。 バス運転士が何でこんな事になってしまったんだ」

 

 

経緯を気になっていたが,今は役所に連絡する方が大事だ。

力彦は携帯電話を出そうとした。

 

しかし、彼の手は止まる。 力彦はそっと立ち上がり,周囲を見渡しながら警戒をする。

木々が台風が来たかと感じる様な物凄い揺れ,水面には地震が起きた様な微々たる振動,

庭園全体に謎の異常現象が起き始める。

 

 

力彦「おいっ どうなってんだこりゃあ!」

 

 

異様な雰囲気に包まれており,力彦は困惑する。

 

 

ゴゴゴゴゴ…

 

 

空から轟音が響き渡る。 それを感じた力彦を上を向く。

見ると空に巨大な漆黒の穴が開いていたのだ。

 

 

力彦「何だ,ケツみたいにでけぇ穴は!」

 

 

力彦は和郎を連れて逃げ出そうとするが時既に遅し,力彦だけが何故か浮き始め

そのままあの穴の方へ向かって行く。 要するに漆黒の穴に吸われるという事だ。

 

力彦はジタバタと暴れるが,漆黒の穴の吸引力には適わない。

 

 

力彦「生涯,最悪の日だ! ちきしょうーーーー!!」

 

 

そう吐き捨てる力彦は,グルグルと身体を回転しながら漆黒の穴に吸われて行った。 彼の運命や如何に・・・

 

 

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