ストーリー

バイブで組み込まれたエリアを抜けた少年。 その奥にある建物の中へ入って行く。


天井や床が無機質な青いタイルで敷き詰められた通路を辿ると、広大なフロアに出る。
 

そのフロアには青一色、緑一色の薬品が詰まった缶が大量に置かれていた。
天井近くまで積載され、部屋の隅まで並べられている。
薬品の貯蔵施設かと思えるくらいに…。


緑色の薬品を見詰める少年はハッと思い出す。
下水処理場で見掛けたものと同じだ。
それに緑地公園でヘドロみたいに汚れた池の悪臭もこの薬品の匂いから来ている。


幸江が逃亡した先で悍ましい代物が出てくるとは…。


あれっ この青色の薬品は一体何だろうか…?


だが、薬品の性質を見極めている場合じゃない。
少年は積まれた薬品の間を通り過ぎる。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


また広いフロアに辿り着いた。 
先ほど通ったフロアとは違い、薬品の缶は置かれてはいない。
変わりにフロアの至る所に設置した機械、
そこから延びる複数のシリコン製の配管パイプが
中心部にあるガラスのケース付きの装置に接続されている。


ここは実験施設か何かか…?


ガラスのケースの中には大量の青い薬品で浸されているが、
薬品から薄っすらと人影のようなものが映る。


何が入っている…? そう思いながら眺める少年。
だが、訝しく感じたのか咄嗟にある決断をする。


敵から奪ったダイナマイトで爆破しちゃおう。


少年はダイナマイトを取り出した。
…だが、次の瞬間!


ドォーン!!


少年の横にある機械。 その後ろからスッと出て来た人影。
手にした銃で装置に近づく少年に向けて発砲。
しかし、少年はその人影の存在に気づいた為、咄嗟に躱した。


「はぁ…、不意打ちまで失敗に終わるなんてね」


機械の後ろから現れ、発砲したのは幸江。 
ドラム型のマガジンが付いた連射式のショットガンを構えていた。
容姿には似合わぬ武装に少年はキョトンとした顔になる。


「そこから離れなさい…」


少年は引き下がらない。


「でしょうね…」


応じる筈がない事は既に知っていたが、それでも溜息を付く幸江。


「あぁそうだ、ここまで潜り抜けた褒美に少しだけ教えてあげるわ。
貴方の頭の中が入り切るかどうかは別として…」


幸江は語った。

液体が入ったケースの中はこの世を変える程の力を持つ人物だという事。
その人物を復活する為、幸江は行動を起こした。

少年と幸江がいるこの施設は世間では知られていない特殊な薬品が保管された貯蔵施設。
都市開発機構が新興住宅地の開発の裏で自治体に不正会計をしてまで洞窟内に建設されたものだ。
その特殊な青色の薬品がその人物に力を付ける為の道具。

幸江は悲願を成し遂げる為、身分を偽り、計画を進めた。
しかし、人並外れた力を持った彼女でも外部に情報が漏れてしまった。

それに慌てた幸江は計画を前倒しにすべく、
貯蔵施設内で"自分より強い知り合い"から設備を貰い、モンスターを生成し街に放つ。
緑色の毒物を水場に流し、治安や軍の者が近づけないようにする。

街に悲劇をもたらすのは計画を完遂する為の時間稼ぎだったのだ。

しかし、まさか目の前にいる少年が計画を狂わす事になるとは思っていなかった。


「劇物に耐性がある上に私の前に立っている…。 
やはりそうね…。 
貴方にはケースに眠っている人物と妙な繋がりがあるんですもの


ん…? 彼女は何て言ったんだ?
この世を変える程の力を持つ人物が自分と関係があると…?


「話は以上よ…。 貴方とは気軽に話すのは楽しかったわ…。
でも今の貴方は私がやる事を阻んでいる。 悲しいけど私の手で葬るしかないわね!」


幸江はショットガンを数発、発砲した。
少年は物陰に隠れてやり過ごす。 

少年もあの時は会話が出来る人が増えて良かったと思っている。
だが、幸江の本当の姿を知った時は変わった。
街を恐怖に陥れ、犠牲者を出した幸江の所業に少年は怒る。

葬られるのは誰か…? それは幸江だ!

野望を粉砕する為、少年はスコップを力一杯握り出す…