足場が悪く、転落すれば電線に当って感電死という危険極まりない場所で激闘を繰り広げている。
男が持つ電気を纏う銃の威力は分厚い壁に穴を開け、頑丈な鉄を一瞬で溶かす。
恐ろしい相手に不安定な足場で戦いを投じる少年は引けを取らない。
共に行動した警官隊が自分を護る為に大人として、職務としてのの役目を果たす為に命を散らしたのだ。
命を挺して守ってくれた者の仇を取りたいと彼の感情は昂る。


男が少年のいる足場に飛び移った時、銃を撃った。
少年は銃弾に向かって走った直後、足場に身体を擦り付けて命懸けの滑走、弾の熱を擦れ擦れになりながらも回避する。
彼の闘志に場所は関係無し。


少年は男との距離を縮めると直ぐに男の脚に足払いで打ち付け、男を転ばせる。
転倒した束の間、怒りをこもった少年は持ってたスコップに熱を掛けた。
熱々のスコップを男に何十回も叩きつけた。
我を忘れるスコップの打撃は足場の床が凹み、支える支柱が折れ曲がる程。


少年は高く飛びあがると、男の顔面に狙いを定めて急転直下。
スコップで渾身の一撃を与えた。


男の頭部は破裂。
そして威力に耐え切れず崩れる足場。
少年は咄嗟に別の足場に飛び移る。


頭部を失った銃の男は電線に落下して感電、身体はあっと言う間に焼き焦げた。
焦げた匂いの煙が上へと舞い上がる。
その光景を少年は目に焼き付いた。


発電所での戦いは終わった。
だが、親しかった人の命は戻らない。
心に空虚はあったが、直ぐに埋め戻す。
その場で立ち尽くす訳には行かないからだ。


少年は発電所を後にする。




~ 発電所から出た後 ~


施設から出て暫くたった頃、少年の携帯に着信音が鳴り響く。
発信者は市長であった。


「無事だったみたいね。 こっちの電力はもう回復したわ。 ところで警官隊は…?」


戦える人員が不在でも言動から見て
慌てていなかった事から市役所は無事である事は判る。
その事を聞かれ少年は警官隊が奇襲に遭い亡くなったと伝える。


「…そうなのね。 いつもは明るくこの町を見守ってきた人が…」


付き添っていた警官隊とは仲が良かったらしく、彼が死ぬのは辛かったようだ。


「彼の犠牲には無駄にはしないわ…」


暫くの間 沈黙を保ったが、悲しみの死を乗り越えた。


「とにかく市役所に戻ってきて、そこで外から助けが来るまで待ちましょ」


市役所に戻り救助を待つよう促すが…


「市長、病院から連絡がありました。 避難先として立て籠もった病院にも攻撃が晒されています」

「何て事…、病人にまで手を出すというの?」



会話中に割り込んだ職員から緊急事態が報告する。
病院にも攻撃を加えようとする事を少年の耳に入った。

落ち込んでいた少年の心にスイッチが入る。


「えっ…? 聴いていたの? …えっ まさか助けに行く? そんなの無茶よ。
いくら貴方でも山のふもとにある病院まで距離は長いし、日が暮れている。
暗闇の中で何が出てくる分かったものでは無いわ! …それでも行くって? 待って…」


プツン…


少年は一方的に電話を切った。
彼は一人で病院の危機を救い出す事を決意する。

だが市長の言う通り自分の命にも関わる行為であり、
自分の行動と選択肢が正しいのか間違っているのか分からない。
しかし、病院で犠牲が出るのを黙って見る訳にも行かなかった。

彼は手放そうとしていたスコップを握りしめ、その場に倒れていた自転車を起こした。
自転車に乗った少年はペダルを思いっきり廻し病院に向けて疾走する。


 

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