艶の無い枯れた草のような毛髪のプロペラ人形。
ボロボロそうな印象とは裏腹にボウガンの射撃能力は段違い。
スコップで致命傷を与えたいが、薄暗く足場の悪いところで戦っているので思うように行かず。
闇雲に近づけばボウガンの餌食になるだろう。
少年は一旦、木に隠れてやり過ごす。
ふぅ…、良い方法はないか? 目を瞑りながら考える。
むっ? 向こうから人間の姿をした敵がトボトボと歩いていた。
この動乱を嗅ぎつけて来たのだろうととつくづく思う。
眺めた瞬間、思考が動き出す。
少年はひらめいたのか、その敵にポイっとスコップを投げた。
敵はこちらへ投げて来たスコップをキャッチする。
一体何だ? 手にしたスコップを茫然と見つめる。
プロペラ音に気付いた敵。
直後、ボウガンの矢を打たれる敵。
人形は少年にスコップを投げ渡された敵を少年と見誤ったようだ。
後に少年ではなかったと気づいたが、
論理思考や感情を持たない人形にとっては然程気にはしない。
人形は再び、迎撃する対象を探し回るべく周囲を見渡そうとした。
電光石火!
凄まじい赤い光が暗い森を輝かす。
人形は何が起こったのか探索を行うとするが、思うように動かない。
背中に背負うプロペラの制御機器に煙が噴き上がっている。
制御を失った人形は煙を吹かし、バチバチと火花を鳴らしながら回転。
そのまま地面に落下した。
地に落ちた人形。
プロペラを必死に動かそうとするも、機器が動かない。
そこへスコップを再び拾いやって来た少年。
少年はスコップを通りかかった敵に投げ渡した。
少年と誤認した人形はスコップを持った敵を迎撃している間、少年は背後に廻り込んだ。
そして指を人形の背中に向けて赤い光弾を発射した。
その結果、人形は撃墜する。
人形は少年から仕掛けた簡単な罠に嵌まったのである。
少年は飛べなくなった人形をスコップで思いっきり叩いた。
金属の打撃音が周囲に響いた。
頭部を打たれた人形、顔面の形が歪み完全に機能停止。
それでも動きそうだと気にしていた少年はスコップで人形を飛ばし、濁った池に落とす。
公園に立ちはだかる強敵を倒した少年は休む間もなく病院へ足を動かした。