水切り男「オラアアアアァァ!!」
予想は出来なかった程、激しい戦闘だった。
水切り男が持つ清掃道具の水切りに刃が仕込まれおり、突進だけでも真っ二つにされてしまいそうだ。
止めを刺そうと水切り男は威勢を上げて物凄い勢いで突進する。
少年は咄嗟の判断と賭けにより、トイレの入口の上枠に片手を掛け身体を持ち上げる、
そして下半身を振り絞って自分に目掛けて突進してきた水切り男の顔面に両脚蹴りをかます。
水切り男「ウガアアアアーーー!!」
蹴られた衝撃で背中から昏倒、その隙を見て少年は持ってたスコップで水切り男の胸部に思いっきり突き刺した。
水切り男「グオオオォォォ!!」
止めを刺す筈が刺される側。
一瞬の逆転劇だった。
水切り男「楽しかったぜ…」
戦う事を満足したかのように事切れた。
強敵を倒した少年の胸の内に残されたのは何も得られなかった虚しさだけ。
此処にいる理由が無くなった少年は病院を後にしていく。
~ 病院の外 ~
再び外へ出た。
病院の一件を終えた後、幸江と共に市役所へ戻り、救助を待つだけだ。
だが、隠れていた筈の幸江の姿が見当たらない。 敵に襲われたのだろうか?
ガンッ!!
困惑している内に背後から殴られる。
こんな時に奇襲を食らうとは…。
頭の痛みに耐えながら後ろに振り向いて応戦に臨む。
だが、相手の顔を見た時、少年は驚いた。
自分を殴ったのは何と…
幸江!!
何故…? 襲われた? 脅された?
幸江「あら? ごめんなさいね…。 でも、こうするしかなかった…」
澄ました表情で語り掛ける。
まるで少年を排除する事を躊躇わないかのように。
幸江「珍しくこの街に来た貴方に私が街中に撒いた種を食い荒らすなんて…。
貴方は大人しくさっさと帰るべきだった…」
そう告げると幸江の肌がじわじわと白く染めっていき、やがて幽霊みたいな姿へと変貌した。
そして幸江の背後では街を襲った怪物の集団がやって来た。
彼らは幸江を襲わず、むしろ従っている。
幸江「弱いままは弱いまま…、報われない意味をここで思い知る事になるのは悲しい事よね。 さようなら」
幸江が手を上げると、怪物の集団が動き出す。
少年を襲えという合図だろう。
幸江は少年に背を向け去って行く。
少年は幸江に後を追おうとするが、怪物の集団に行く手を阻まれた。
その間、幸江の姿は森の中へ消えて行った…