~ 人工島 ~
由美「五十朗,この人工の島は何の為にある?」
五十朗「さぁな,よく分からない施設を俺達から目を離す為にあるんじゃないか?
そんな感じがするのも自然だが」
二人は気になっていた。 何の為に人工島が創成されたのか?
大衆には島を作るという情報を与えているだけで,それ以外は何も知らされていない。
貨物関係の役割なら判るが…
この人工島には謎が包まれている。
五十朗「辿り着いたぞ,ここが例の施設か?」
由美「ここも潜伏しとるだろうな」
施設を見上げながら先へ進もうとした直後,二人の前方にマシンガンの銃弾が降り注ぐ。
銃撃に気付いた二人は近くであの男の気配を感じ取る。
五十朗「この気配はフジヤマか」
フジヤマ「如何にもその通りだ」
二人の近くにあるコンテナの奥からフジヤマが飛び上がり,その上に立つ。
五十朗「まさか,最近出来た知り合いが殺し屋とは驚いたもんだ。
前から決まったとか言ってたな,どうして殺し屋になろうと?」
由美「フジヤマさん教えてくれ! 良い人だったのに」
フジヤマ「ふっ…,昔はただの公務員だったのに今は奴等の仲間。
俺がこうなってしまったのは唯一つ。 街の現実を見て疲れ果ててしまった…」
フジヤマは自分が殺し屋になるまでの回想を述べる。
俺はこの街に馴染んでいた。
自然に満ち溢れ,とっても静かであり安らぎのある場所だったが,そう長くは続かなかった。
一部の頭の悪い市会議員らが,無条件での誘致活動政策を打ち出した結果,科学薬品工場が建設されてしまったのだ。
徹底した安全管理で操業,雇用創出や税収増に繋がったのは確かであるが,自然環境の影響は避けられなかった。
そして,この存在がさらに混乱を引き起こす。
一部の過激な環境保護団体のネガディブキャンペーンで工場の操業縮小のみならず,街全体に悪印象を与え人口が減った。
さらに政策を押し通した議員らは企業献金や違法な選挙活動等のスキャンダルで辞職。
その後,街の景気が悪化による財政の赤字,自然環境の問題だけが残った。
これ等を打開しようと,打ち出されたのが観光事業だ。
偶然,各地で遺産が残されたからこそ出来た取組みだ。
幾つかの資料に『恐ろしい伝説がある』と記されている通り,危険である事は承知の上でだ。
俺は心の中で反対していたが,街の問題を抱えている現状ではどうしようも無く仕方なく沈黙した。
調査隊を送りつつ観光地化を進めた結果,街の賑わいは着々に戻って行った。
後は税収で自然環境の問題を解消し,昔の自然に満ち溢れた街に戻すだけ。
そう思われた矢先だった。
どういう訳なのか,他方からあらゆる団体が市民を装って,大規模な反対活動を繰り広げたのだ。
あの時のネガディブキャンペーンの再来だ。
大声や奇声をまき散らしたり,物の破壊,市民や市役所に対する誹謗中傷等,反対活動とは遺脱した愚行振りだ。
俺達は詳しい経緯を説明をしたが聞き入れず,それどころか俺に向けて奇声を上げながら生卵を投げる始末だった。
要するにコイツ等は理解しようとしない逝かれた偽善者の集まりだった。
コイツ等のせいで,街の印象は再び悪化した。
それ以来,俺はうつに悩まされる様になる。 同僚で友人でもあるウエモトは俺を気遣ってくれた。
だが,街が二度も廃れるという絶望に痛めつけられた俺の心の病は完全に癒える事は無かった。
俺は心中,こんな事を思ってしまった。
もう何かも消えてしまえば良い…
どうしたのだろうか? とうとう,俺は可笑しくなってしまったのか?
そんな事を思うようになってしまった。
そんなある日,俺のもう一人の友人から誘いがあった。
『一緒に世の中を破壊してみないか?』
回想はここで終える。
フジヤマ「それで俺は殺しを染める男になった訳だ」
由美「フジヤマさん,ちと考え直してくれ! あの時にどっかで解決の糸口がある筈や」
フジヤマ「あの時に他の方法を探れだと? じゃあ,どういう方法なのか教えてくれよ」
由美「えっと…」
フジヤマ「はぁ…,此処まで来る程の実力者でありながら,口だけ言って実際は打開策を示さない。
正義感のある奴はいつもそうなのかねぇ…」
求められる問いに由美はあやふやになり,それを見たフジヤマは溜め息を付き,
皮肉まじりに言い返した後,服の懐から注射を取りだす。
それは,ゼイターから貰った謎の薬品入りの注射である。
五十朗「おいっ 何をする気だ!」
フジヤマ「ケリを付ける為の手段だよ」
そう言うと,フジヤマの腕に注射を刺した。
すると,彼の両腕がみるみる内に変形し始め,やがて怪物の様な風貌になった。
フジヤマ「ほぉ・・・,これだけか? いやっ 力が湧いて来たぞ」
五十朗「お前…,それで自身を滅ぼす事になるんだぞ!」
フジヤマ「ずっと前から崩壊気味だよ!」
怒鳴り散らすと,腕からレーザーが噴射した。 レーザーは灯台に当たり大爆発。
上部分が地面へ爆煙を上げながら崩れ落ちた。
フジヤマ「どうだ怖気付く気分が湧いたか?」
五十朗「俺達の仕事は危険に挑む事,そんな物で負ける訳はいかない」
由美「フジヤマさん,貴方の理由が分かったけど,こんな事をするのは納得出来ない。
だから,貴方を何としても止めて見せる!」
フジヤマ「やはりそうなるか…,なら来い! 三度目の正直を味遭わしてやる!」