二人は拳銃で大型装甲車両と交戦していた。

 

 

何十発かの銃弾を車両の前面ガラスを撃ち続けた結果,

パリーンという音を立てて割れた。

 

 

五十朗「よしっ! 今だ!」

 

 

五十朗は割れたガラスに向けて手榴弾を投げ入れた。

その手榴弾は武装集団の敵兵を倒した際に手に入れたものだ。

 

 

ドォーーン!!

 

 

手榴弾は装甲車両の中に入り,内部で爆発が起き,

側面のガラスも衝撃で割れ,爆風が外部へと飛び出す。

これで装甲車両は破壊したのも同然だろうと思った二人であったが・・

 

 

ゴォォーーー!!

 

 

何と装甲車両が前進し始め,徐々に速度を上げていった。

 

 

どうやら爆発が起きた際,内部のシステムが衝撃で制御出来なくなったためである。

 

 

車両が前進する先は,何と二人が妖刀を

探しに入ったあのお寺だった。

 

 

五十朗「まずい! このままでは遺産がただの残骸に!」

 

 

このままお寺に追突してしまうのだろうか・・,誰もが思った二人。 その時だった。

 

 

ヒューーー ドォーーーン!!

 

 

 

何処からともなく飛んできた

一発のロケット弾が暴走する装甲車両に直撃し,大破した。

 

 

これを見た二人も安心した表情で落ち着いた。

 

 

五十朗「よかったぜ・・,もしかして軍が来てくれたのか?」

 

 

??「いやっ 違うね。 俺がやったんだ。」

 

 

誰かの声に気づいた二人は振り向くと,建物の屋根から

携行ロケットランチャーを構えたウエモトがいた。

 

 

撃ち終えた後,ウエモトは建物の屋根から飛び降り,二人に近づいた。

 

 

五十朗「これは驚いたぜ・・ ( しかも一人称が私から俺に変わるなど・・ )」

 

 

ウエモト「先ほど,観光客や市民を街の外へ避難したばかりでね。

二人の様子を見に行こうとここまで来たんだ。 まさか俺が”撃つ”という展開が来るなんてな。」

 

 

由美「偶然来て良かったわぁ。」

 

 

五十朗「ところで,何で軍が持ってる様な武器をアンタが持ってるんだ?」

 

 

ウエモト「これは武装集団対策でこの様な武器は市役所に置いてあるんだ。

それに君達警察も俺が持ってる武器が設けてる筈だ。」

 

 

五十朗「そういや,それを持つ事を認められた法律があるって聞いたけど・・。」

 

 

由美「まさか実用されるなんてアタシも驚きやで。」

 

 

五十朗の言う法律とは,民間人や企業人,公務員に武器の保有を最近認められている。

これは以前,ニュータウンで起きた武装集団による暴動事件の影響から,

自己防衛のためにこの様な形になったのである。

 

 

五十朗「こりゃあ,警察も軍もいらんな・・」

 

 

ウエモト「とりあえず,この辺の敵は全滅ってとこだ。」

 

 

五十朗「あぁそりゃあ良かった良かった。」

 

 

ウエモト「・・・ただ,これは一部に過ぎない事なんだ。

役所に戻ったら,そこで緊急の連絡があってさ・・・。」

 

 

五十朗「まさか・・・?」

 

 

ウエモト「各地で同じことが起きている。

 

 

五十朗「やはりな・・。」

 

 

ウエモト「ここの治安は薄くいしな・・」

 

 

この地区の治安は正男が住む街と比べ,地方の町並に薄い。

その上にZECTと呼ばれる犯罪組織(武装集団)は武器や兵器を持っている。

戦力ではZECTの方が格段に上であり,迂闊に相手にすれば,返り討ちに遭いやすい。

 

 

つまり現地の警察や役所ではどんなに

必死に手を討とうが,あの武装集団には適わない状況にある。

 

 

五十朗「ウエモト・・,ここは俺に託してみないか?」

 

 

由美・ウエモト「・・・!?」

 

 

五十朗「軍や暴動を止めた誰かが此処に来るのには数時間はかかる。

その間は奴等の好き放題だ。 でも俺はそれを許す事は出来ん。」

 

 

ウエモト「大丈夫か? ・・前の暴動でも治安部隊さえ苦戦していたぞ。」

 

 

五十朗「それでも構わねぇ・・,こんなところで黙って待ってるのも嫌だしさ」

 

 

ウエモトは彼が暴動を止める事が出来るかどうか悩んでいた。

しかし,今はそんな事を考えている場合じゃなかった。 何も手を討たず,

そのまま放って置くと,武装集団の手でこの地区は壊滅に陥るからだ。

 

 

ウエモト「その信念・・ 伝わったよ。 しかし,手ぶらで行くのをアレだろ。

これを渡しておく。」

 

 

ウエモトは地図や資料,通信機を五十朗に手渡した。

五十朗はそれを受け取った。

 

 

五十朗「じゃあ有難う! これで十分だ。」

 

 

五十朗は暴動を止めるために,その場から立ち去ろうとしたが,

前方に由美が立ち止めされてしまった。

 

 

五十朗「おいっ どういう事だよ。」

 

 

由美「五十朗・・ アンタは肝に銘じ過ぎだ。

アタシも一緒に行くよ。 二人で行くと安心するやろ。」

 

 

五十朗「お前・・・,そうだな。 俺一人で行くの,少し不安だった。」

 

 

由美「じゃあ行こうや。 どこに行くけん?」

 

 

五十朗「そうだな・・,まずはあそこへ行こう」

 

 

二人は各地で起きた暴動を止めに行くため,和風の街を後にした。

 

 

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〜 五十朗達から離れた場所 〜

 

建物の屋根の上で茶色のコートを着た男が双眼鏡で五十朗と由美が

パトカーで和風の街から出て行くのを目にした。

 

 

??「馬鹿め・・,装甲車両を壊したからって,いい気に乗るなよ。」

 

 

機嫌を悪そうな顔をしながら,屋根の下へ飛び降りた。

そして下にあった黒いワゴンに乗り込み,彼等を追いに行った。

 

 

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