~ 洞窟 ~
エルティナスの街の異変に気づいた二人は、街の現状を知る為、下山する事になった。
彼らが進む下山道は、途中、洞窟に差し掛かる為、入り口前に立つと、二人は明かりを灯す魔法を発動し、
洞窟の中へと入り込んで行く。
この日は、晴れ晴れとしており、ヴェレン地方と別の地方の境目である山頂でも、
比較的、暖かい空気で覆われていた。
しかし、洞窟の中に入ると、一変、寒い空気に変わる。
洞窟内に流れる冷たい空気と、つらら状の鍾乳石の先端から垂れ落とす冷たい水滴が、
二人の化け物との戦いで熱した身体を徐々に冷やしてくれる。
リックス「あぁ…、洞窟の中に入ると、やっぱさぶいよな…
腹を壊しそうだぜ」
エリーナ「そうね・・ 薄着なのは、お互い様よ」
自分達の服装の会話をしながら進んでいくと、地底湖に辿り着く。
ここの地底湖は、鍾乳石から垂れる水滴等で出来たものである。
しかし、透けて綺麗だった水は、緑色の泥により変色、リックスがその濁った水の臭いを掻くと、
吐き気がしたと共に水から離れた。
リックス「奥へ進んでいくと、何か臭くなってきたなと思ったら、これか?
くそぅ、ここもどうなってると言いたいところだ」
濁った水から放つ臭いに気にしながらも、飛び石を渡り、奥へ進んでいく。
しかし、小さな岩の島に着地すると、そこで足はピタリと止まる。
何処からか獰猛な気配が漂う為だ。 周囲を見回しながら、剣を構え続ける二人。
ザバァーーン!!
暫くすると、島の奥の水面下から巨大な魚が泥の飛沫を上げて、飛び出してきた。
巨大な魚は二人がいる島とは別の島に着地した。
リックス「あん? なんだ、あの魚はぁ!!?」
巨大な魚の姿は、うろこを含む全身が緑色で覆いつくされていた。
”緑色の魚”というのは、誰もが気分が悪くするものであろう。
しかし、この魚の気持ち悪さはそれだけではなかった。
その魚は足が付いていた。
しかも、色は人の肌と同じで、男が魅了してしまいそうな美脚を誇っている。
しかし、足の美の度合いが低かろうか高かろうか、魚だと気を引いてしまう。
エリーナ「もう、何なの? その足、私より美しいじゃない!」
リックス「でも、魚に足というのは、やっぱり気持ち悪いぜ!」
エリーナ「だよね・・」
ボソボソと話をしていると、巨大な魚が此方へと見詰めてきた。
リックス「げっ あの魚、こっちを見てるぜ! おいっ、こっち見んな!あっち行けよ!」
リックスは腕を振り回したが、巨大な魚はお構いなしに、
口をパクパクしながら、此方へと走り出す。
エリーナ「リックス・・ どうやら私達を食べる気みたよ」
リックス「くそぉ・・ コイツの昼飯にされるのはゴメンだぜ!」