〜 聖地 〜

 

水色のドレスの女は4つの鉄筒全て、一気に砲弾を発射する。

後部に煙を噴きながら、不規則な軌道で飛び惑う砲弾。その強力な武器の装備に二人は不安と焦りを滲ませる。

 

 

水色のドレスの女は再び、全ての鉄筒から砲弾を発射、リックス達に向けて高速で突き進む。

それを見た二人はある反撃策を思いつく。 それは生死を左右しかねない賭けの様なものであった。

 

 

リックスは地面から飛び、地面に向けて爆発する弾を出す魔法を発射、地面に着弾して爆発、

向こうから来た砲弾も誘発する。

 

 

凄まじい炎と共に高く舞い上がる黒い煙。 その煙が風に乗り、水色のドレスの女の方へ流れ込む。

黒い煙で遮られた水色のドレスの女は、触手で煙を一気に払い除けた。

 

 

直後、水色のドレスの女は気づいた。 そこに二人が居なかったのである。

ふつうの敵であるならば、煙を利用して逃げたのではと思い込むであろう。

だが、理性を失っている水色のドレスの女には呆然と見詰めているだけである。

 

 

突如、後ろから地面に何かが付く音が水色のドレスの女の耳に感じ取る。

後ろを振り向き掛けた直後、ザシュという斬激音と共に、四本の触手がバラバラに切られ、

鉄筒も地面に落ち、ゴーンという音を立てた。

 

 

左右を振りながら、斬られた触手を見詰めていた。

 

 

ザシュッ!!

 

 

水色のドレスの女に激痛が走った。 下を向くと、腹にチェンソーの先端があった。

後ろから自身をチェンソーで貫かれたのである。

 

 

持つ主は誰か明らかであった。

それはリックスである。

 

 

リックス「どういう事か分からねぇが、お前が望んだ事だ」

 

 

そう言うと、チェンソーに強烈な振動を走らせ、水色のドレスの女の腹をチェンソーの振動で抉らせ、

自身の血が体外へ噴出し、地面の至る所に付着する。

 

 

水色のドレスの女「あっ… ああぁ…」

 

 

チェンソーを引き抜くと、水色のドレスの女は弱弱しい声を出しながらフラフラと歩く。

そして、そのまま俯けになって倒れこんだ。

 

 

その後、二人は水色のドレスの女に近づき、リックスが彼女を仰向けにさせた。

彼女の声はさっきの野獣の様な顔つきは消え、穏やかな表情になっていた。

壮絶な戦いを経て、理性を取り戻したのである。

 

 

水色のドレスの女は目が開き、二人の方に向け、喋り出した。

 

 

水色のドレスの女「私を倒して下さったのですね…」

 

リックス「あぁ…、それにしてもアンタは何者なんだ? どこから来た?」

 

 

リックスの問いに、水色のドレスの女は指を下に向けた。

指先には湖の水面であった。

 

 

水色のドレスの女「湖の底から…」

 

エリーナ「えっ?」

 

水色のドレスの女「私は天上から降臨して以来、水面底からエルティナスを見守っていた者です。」

 

エリーナ「じゃあまさか、貴方は!?」

 

水色のドレスの女「そう、私は女神。 エルティナスの伝説で存在したあの女神です

 

リックス・エリーナ「…!?」

 

彼女こそ、女神という衝撃の事実に、二人は驚きが隠し切れなくなった。

 

リックス「そうなのかよ…。 でも、何でだ。 何でアンタは自身の正体を隠した?

正体を知れば殺さず、俺達は天上界に助けを求め、アンタを殺さず救う事が出来た。」

 

女神(水色のドレスの女)「貴方は純粋な男ですね…、でも、そんな時間もありませんでした。

私が醜い魔物の様な姿で理性を失えば、自身が全世界の脅威になり、私はそれを恐れたのです。

だから貴方達を誘い、私を倒して下さった。」

 

エリーナ「…。」

 

女神「こんな醜い姿を晒してしまい、心意が失い掛けていますよね…。

私はこんな姿には好きでなった訳ではないのです。 全て、あの空から降り掛かる有害なる廃棄物のせいで…」

 

リックス「…?」

 

 

女神は語り始める。

 

 

〜 回想 〜

 

 

遠い昔、この広大な草原で人類と征服を目論む魔物の軍隊による闘争が繰り広げていた。

長年続いた争いで、多大な生物の犠牲と自然環境の破壊等で大地は次第に崩壊しつつあった。

そんな中、天から美しき女性が舞い降りてきた。 

 

 

それは、女神であった。

 

 

彼女は天の上からその光景を眺めており、悲しんでいた。 やがて、心の中に悲哀が溜まり、ついに争いを止める為、降臨する。

女神は群集の目の前で片手を天に上げ、手から眩い光を放った。 すると、争いを行った者達は次第に敵意や憎悪を薄れ、

やがて、この大地で起きた戦争は女神の手で幕を閉じた。

 

 

終結後、女神は天の上へ戻らず、丘の上にある大きな湖の底へ沈んで行った。

彼女は、美しいこの大地を守る為、永遠に留まる事を選んだのである。

 

 

この出来事は伝説として広く伝わった。

 

 

そして、伝説に伝わった多くの者はこの大地に移住し開拓。 始めは村であったが、

次第に人口は増え、立派な城が建つ程にまで成長を遂げ、一つの国となった。

 

 

その国の名がエルティナス。 開拓の時からそう名付けられた。

また、名前の由来は、この大地に降臨した女神の名前から取ったものだ。

 

 

時が過ぎても国の繁栄が続き、女神エルティナスは湖の底から見守っていた。

この国は永遠に平和が齎す。 女神も含め誰もが思っていた。

 

 

昨日までは…

 

 

昨日の夜に悲劇が起きた。

空から別次元へ繋がる巨大な穴が開き、そこから剛鉄で出来た巨大な謎の黒い飛行物体が出てきたのだ。

その物体は、エルティナス全域で有害な化学薬品、使い捨てられた機械、未確認生物の死体が放出された。

 

 

女神はそれに気づいたが既に遅かった。 化学薬品が湖へ放出され、湖が汚れた。

当の女神も、化学薬品で汚染された湖の水に浸され、拒否反応で発作を起こし、意識を失った。

 

 

意識を覚め、湖の外へ出た。 そこで変り果てた国の光景を目にした。

悲しみに満ちた女神はこの忌々しい事態を食い止めようと動き出そうとした時、

女神は発作で咳を吐いた。 その後、口を押さえていた手を見ると…

 

 

緑色の血が付いていた。

 

 

さらに女神は痙攣を起こし、身体が思うように利かないどころか、意識が朦朧としてきた。

女神は異変に気づいた。 化学薬品で自身の身体が変わってしまったのだ。

 

 

このまま意識が完全に失えば、自分が破壊神となりエルティナスのみならず

他の国にも広がってしまう。 そう、頭に過ぎる。

 

 

そんな時、二人の若い男女の戦士がこの国へ来てくれた。

女神はその二人に自身を滅ぼさせようとここへ誘導させたのである。

 

 

〜 回想 終了 〜

 

エルティナス(女神)「残酷だけど、これが現実ですね…。」

 

リックス「そうだったのかよ…、全てはあの謎の飛行物体のせいで!」

 

 

それを聞いたリックスとエリーナは悲哀に満ち、涙を零す。

 

 

 

その時、空の上の何も無い空間から穴が開きだした。

女神が語った通り、それは別次元へ繋がる穴であった。

そこから、あの謎の黒い飛行物体が現れ出したのである。

 

 

 

リックス「あぁ、何だアレは!?」

 

エリーナ「まさか…、これは?」

 

 

謎の黒い飛行物体の正体は黒い大型の飛行機であった

 

後、黒い大型の飛行機の登場はオープニングを参照

 

 

エルティナス「あぁ、大変…、このままでは」

 

リックス「エルティナスさん! ここは俺達に任せてくれ 」

 

エリーナ「でも、あの物体は大空にあるによ! どうやって行くつもり!?

それに、その子( 王の娘 )の事を考えると…」

 

エルティナス「…私なら出来ますね。 丁度、手が利くようになりました。

貴方達を魔法であの飛行物体へ送り出し、その子(王の娘)を安全な所へ送り出せます。」

 

リックス「おう、意識が取り戻したついでに身体が利くようになったんだな!」

 

エリーナ「じゅあお願い! 私達をあそこへ」

 

エルティナス「分かりました…。

最後にお願いです。 …エルティナスを救ってください。」

 

 

そう言うと、エルティナスの両手から魔法が発動。

二人を眩い光を包み込み、光が消えた同時にその場から姿を消した。

二人はあの飛行物体と呼ばれる、黒い大型飛行機の内部へ乗り込んだのである。

 

 

そこで、何を目にするのだろうか…?

 

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