〜 墜落現場 〜

 

燃え上がる機体の前で、激闘を繰り広げていた。司令官は高度な技術を持つ武器で攻めた。

司令官はリックスに向けて、武器で勢いよく縦に振り落とす。 リックスはチェンソーの先端で司令官の武器を受け止める。

夫々の武器が交互に衝突し合った。 司令官はリックスを押し倒そうとするが、リックスの怒りの猛攻で逆に押されて後退していまう。

さらにリックスのチェンソーの振動が、司令官の武器の先端に亀裂が入った。

 

本来、司令官の持つ両端に水色に光る刃物を持つ棒の様な武器は、

この世界で鉄の鎧を貫く程の強度を持つ剣でさえ、破壊させる威力を持っているが、

自らの剣を失い道中で偶然拾ったリックスのチェンソーは、亀裂が一つも入っていない。

 

 

バリィーン!!

 

 

司令官の刃物が一気に割れた。 

リックスのチェンソーの強度が、司令官の武器よりも越えていたようだ。

 

自らの武器の一部が損壊して驚く司令官に、リックスは怒号を上げ、

司令官の腹に足で蹴り飛ばした。

 

司令官はそのまま地面に倒れこむ。

 

 

司令官「( おぉ…、馬鹿な。 コイツも異世界の武器を持っていたとは…。

しかし、コイツのチェンソーは不具合で廃棄されたんだぞ )」

 

リックス「おい! てめぇの死の直前に、俺達と女神、この国に向けて詫びを見せやがれ!」

 

司令官「はぁ?」

 

 

リックスはチェンソーを突きつけながら、司令官に謝罪をするよう申し付ける。

司令官は敗北同然だが、その場で殺しても殺しきれない程の苦しみを心から抱いており、

司令官に詫びの言葉を言わせ、苦しみから解放しようとしている。

しかし、司令官は謝らず、脅えるどころかリックス達に向けて嘲け始める。

 

 

司令官「くっ、俺を殺してどうなる? 下手したら、

仲間の連中が知れ渡り報復を行うのかも知れんぞ」

 

リックス「知った事ねぇ! だったら、それが間違いだったと知らしめるまでだ!」

 

司令官「馬鹿だ、貴様等が文明の低い世界の住民である正しき自覚を持っていないようだ」

 

 

そう言うと再び立ち上がり、もう一つの刃物でリックスに切り掛かった。

 

 

司令官「死ねえぇ!」

 

 

刃物を振り落とす直前に、リックスはチェンソーを勢いよく横に振った。

 

 

ズバアアァッ!!

 

 

リックスのチェンソーを、司令官の首の横に当り、そこから大量出血が起こるが、

手を止めるのを止めずそのまま続け、ついに司令官の首を切り落としたのである。

司令官の息の根を止めると、首下の身体はピクリと止まり、ガクリとそのまま地面へ倒れ込んだ。

切断面からまだドクドクと血が溢れ、地面に染み付く様になる。

 

司令官を倒したリックスはチェンソーを手を放し地面に落とした後、エリーナと共に女神へ急接近した。

 

 

エリーナ「女神様! しっかりして下さい」

 

 

エリーナは回復魔法でエルティナスの傷を癒そうとするが、相当大きなダメージを負っており、

回復がままならず寧ろ、傷口からドクドクと血が流れていた。

エルティナスの目が空ろになる時、リックスとエリーナに振り向けた。

 

 

エルティナス「お二人さん、もういいです。 私はもう助からない…。

でも、エルティナスに復興という希望があれば、死後も満足です」

 

リックス「おい、馬鹿な事を言うなよ!」

 

エルティナス「貴方達がエルティナスの救世主になって本当に良かったです。

本当にありがとうございました…、そしてさようなら」

 

 

そう言うと、エルティナスが力が抜けたかの様に目を閉じた。

女神エルティナスは、大昔に自らの手で救ったこの大地で永遠の眠りを遂げたのである。

死後、女神の全身が白く輝き始め、やがてそれが光の雫として分散、天の上へ昇って行く。

 

 

エリーナ「あぁ、そんな…」

 

 

女神エルティナスの死に涙を零すエリーナ。

悲しみに暮れる中、リックスはエリーナに肩を寄せる事しか出来なかった。

 

 

 

 

そんな中、人々のざわめく声が聞こえてくる。

リックスが声音のもとを振り向くと、向こうから数十人の人々が此方へ向かって来た。

その中に、エルティナス王や依頼で遠方から来た戦士達が含まれている。

彼等は墜落の轟音を聞きつけ駆けつけに来たのである。

 

 

男戦士「なっ、何だこりゃあ?」

 

女天使「私が見た飛行船とは全く違うわ!」

 

女魔術師「訳の分からないガラクタが散らばっていますわね…」

 

男戦士「それに、あの死体は何だ? 見慣れぬ服装をしているな」

 

エルティナス王「なんだ、マネキンみたいな物が転がっておるぞ」

 

 

男戦士の言う見慣れぬ服装の死体は首を切り飛ばされた司令官の事。

そしてエルティナス王の言う、マネキンみたいな物はアンドロイドの残骸である。

 

墜落現場でこの世とは思えない物が目立っており、この世界の人々を驚かせた。

そんな中、女戦士が指を刺した。

 

 

女戦士「あっ、二人を見つけたわ」

 

 

指した先、呆然と佇んでいるリックス達を発見した。 

その後、直ぐにリックス達の基へ近寄った。

 

 

エルティナス王「無事だったか二人とも!」

 

女戦士「姫様! 一体これは一体何なんですか?」

 

 

女戦士はエリーナを姫様と呼んだ。 そう、彼女はとある大国の王の娘である。

彼女は以前、王宮で華やかに暮らしていたが、最近国外で魔王が率いる帝国軍の偵察隊が確認されており、

良からぬ方向へ向かわない様、彼女を旅人としてひっそりと国外へ避難したのである。

 

女戦士の呼びかけて、エリーナはゆっくりと此方へ振り向いた。

嘗て姫として常に微笑んでいた彼女の表情は一変、暗く重い形相へと変わっていた。

女神の死が彼女の心を突き刺したものと言えるであろう。

変り果てたエリーナの表情に、女戦士の口が開いたままになり、そして青ざめた。

 

リックスもそうであった。 先程まで自由気ままな性格を持って、あらゆる苦難を乗り越えてきた。

しかし、女神を救えなかった悲しみが抑えきれず、顔が呆然としていた。

 

 

悲哀感の漂うリックスとエリーナは疲れ果て、ついに地面に倒れ込み、気を失ってしまった。

 

 

女天使「あぁっ! しっかりして」

 

エルティナス王「誰か! その者を医療テントへ運んでくれ!」

 

 

エルティナス国の兵士等によって、気を失った二人を担架を乗せ、

避難場所へ向けて運ばれて行った。

 

二人の決戦は、最後の最後で空しい形として終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は当初、夫々の理由で報酬金を得る為、山賊退治に出向いたが、

そこで異形の怪物の群れに襲われ、ここで異常な事態へ直面した。

 

薬物汚染とあらゆる物体を融合した怪物の群れを薙ぎ払いながら山を越え、

街中を通り、城内を駆け抜け、聖地という聖域を踏み出す。

 

そして、聖地の湖で汚染で狂いだした女神が二人の前に姿を現した。

女神から『殺して』と懇願され、当初困惑したものの、やがてそれが避けられぬ戦闘へ導いた。

幸い、女神は正気を取り戻し、前代未聞とも言える殺傷は免れた。

 

直後、別世界から来た宇宙飛行艇がエルティナス国の上空に現した。

寛大な被害を出させないためにも、二人は女神の協力で宇宙船に乗り込んだ。

 

これまでの元凶であった、汚染廃棄物投下を主に行う宇宙飛行艇を

司令官を殴るついでに撃墜させた。

 

元凶を潰し全てが終わった矢先、女神は偶然生き残った司令官の手によって不意打ちを食らわされた。

二人の戦士は余りの悲劇に激怒し、救い様の無い司令官をその場で殺した。

その後、女神に治癒を行うが健闘空しく、この大地で息を引き取ってしまった。

 

エルティナス国を含むヴェレン地方の象徴であった女神は目の前で消えていく光景を目にした二人は

心身に絶望感が襲い、その場で気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

これで、リックスとエリーナの戦いは終わったのである。

女神が生きていれば、明日という希望があったのかもしれない…

 

 

 

 

 

 

 

あれから、3週間後…

 

 

〜 酒場 〜

 

どこかの大きな街で、多くの旅人が集う酒場があった。

昼間の時間帯であった為、この時は多くの客人で店内を賑やかにしていた。

カウンターの前の席には、赤い帽子と白いシャツを身に着けた男が

氷入りの水のコップを手にしながら、座り込んでいた。

誰かを待っているかの様に…

 

その男があくびをしていると、入り口から美しい顔つきをした女性が店内へと入っていく。

女性の視線がカウンターの前で座る男のとこに映ると、直ぐに顔が其方へ向き、男の名を呼んだ。

 

 

女性「まさか、こんなところにいるのねリックス」

 

男性「あぁ、3週間ぶりの再開だな。…エリーナ」

 

エリーナ(女性)「自分の故郷で泣き沈んでいると思ったけど、結構心の治りが早いのね」

 

リックス(男性)「当たり前だ、いつまでも悲しんでいる場合ではない。

俺は色々やるべき事があるからな」

 

エリーナ「ここに来ると、山賊退治やエルティナスの事を思い出すわね」

 

リックス「まぁな」

 

 

嘗て異常な事態に見舞われたヴェレン地方は現在、エルティナス国を含む全域において

一般の人の出入りが禁止されている。 あの手この手で汚染廃棄物の浄化作業が進められており、

少しずつだが、元の姿へ戻りつつある。

 

 

リックス「エルティナスは復興している様だし、女神もきっと雲の上から見守っていそうだな」

 

エリーナ「そうね」

 

リックス「さてと、さっさと出稼ぎ先へ行かないとね。

農地は広げたんだが、今度は人件費は嵩んでしまったからな」

 

エリーナ「その為に海賊の討伐に行くのね。

私も行くわ。 一度、その街に行ってみたいし」

 

リックス「おぉ、そりゃあ頼もしいぜ。 おっと、そろそろ時間だな。

じゃあ、行こうぜ。 ロマンの溢れた海の世界へ!」

 

 

そう気合を入れると席に立ち上がり受付で金銭を支払い店を出た。

 

 

 

 

 

 

二人の心の傷の治りが思うほど早かった。

何時も悲しみに暮れては何も変わらない、この悲哀を乗り越えてこそ戦士は強くなる。

 

二人は様々な思い込めて、次の依頼先へ向かって行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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〜 墜落現場 〜

 

エルティナス国から離れた草原では、墜落で大破した大型飛行機の残骸が未だに残っていた。

異世界の文明と技術を持つこの機体に、この世界の学者等が目を光らせそうであるが、

ヴェレン地方全域で一般人の立ち入りが禁じられている為、その機会は掴めそうに無い。

 

また、エルティナス国の王家一族は、その謎の技術が帝国軍等の魔の勢力に手に渡る恐れがあり、

この機体は何れ、除染と同時に撤去される見込みであり、一般人にお目に掛かる事はまず無いであろう。

 

 

 

 

 

 

普段誰もいないこの場所で、3人の男が機体を眺めていた。

その内、一人の男が手持ち式のコンピューターを指で操作しながら調べ物をしている。

 

彼等は皆、濃い青の帽子とスーツ、ズボンに灰色のジャケット、水色に輝く膝のサポーターを

身に着けており、どれもこの世には存在しない服装をしている。

 

 

部下1「ここですね、例の事件が起きたところ」

 

部下2「最悪だな。 海兵隊の一部が反乱を決起したと聞いているが、

まさかこんな事をするとは…。 連中には理解は得られるが、これは同情は出来ませんな」

 

リーダー「やはりその通りだったな…。 奴等は僕達、軍から目を掻い潜る為に偶然

この世界を廃棄場所として選んだみたいだな。 おまけに、化け物を回収しようとしてたけど…」

 

部下1「…にしては、今回の一件で奴等の目論見は潰れましたよ」

 

部下2「驚いたね、俺の目から見ればこの世界は中世の雰囲気が感じて科学技術は発達途上だ。

にも関わらず、奴等を叩きのめす者がいたとはな…」

 

リーダー「だが奴等は皆、短気だ。 思う通りに行かなければ、報復行為を行う可能性がある。」

 

部下1「その前に我々と王子である貴方が何とかしなくてはなりませんね。 ASさん」

 

AS(リーダー)「あぁ、久しぶりに大きな仕事が来たと思えば…。

いつか正男という助っ人共に、反乱の問題を解決したいとろろだなぁ」

 

部下2「正男かぁ…、その名前懐かしいよ。 前にスターフロートシティを救ったんだろ。

そんな奴がいたら頼もしいけど」

 

AS「でも、これは僕達だけの問題。 何でも、正男さんの様な強い人に頼るのは、

軍全体の必要性が疑ってしまうし、僕自身が惨めに感じてしまう」

 

部下1「それでこそ王子ですな」

 

AS「さてと、お喋りはここで控えよう。 僕達は被害現場の状況確認と撮影を終えたところだし、

スターフロートシティに帰還して、うちの姉さんに報告だ」

 

部下1・2「イエッサー!」

 

 

そう言うと、ASが持つ手持ち式コンピューターに再び操作を打ち出すと、

墜落現場の近くに何も無いところから、空間の歪みが生じ、何かが形成する。

形成を終えるとそこに小型の宇宙飛行機があった。

これは周囲の目から逸らす為に機体を透明にする機能を備えている。

 

3人はその機体に乗り込み直ぐに離陸、機体を再度透明化を行い、自分達の世界へ続く穴を開かせた後、

機体ごと穴に入り込み帰還先へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

ASと部下二人は宇宙銀河軍の海兵隊員である。

彼が言う"奴等"とは汚染廃棄物投下を指示した司令官や反乱を起した一部の海兵隊員の事を指している。

正男が住む星を含むAS達の世界で一体何が起きたのだろうか?

 

彼等が言うには奴等は短気である。

そうであれば、リックス達の世界に汚染廃棄物による混沌が続く予感は拭え切れない…

 

 

 

 

RED ZONE FANTASY

 

THE END

 

 

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