工場内で繰り広げられる最大級の怪物を相手にたった一人で挑む正男。
駆除業者としてかつてグラーダやセンクウザなどの撃退した実績を持っているが、
これ程凶暴なものを出くわすのは彼にとって経験外だった。


正男「このバカでかいトカゲめ…。 ここまで来たから死なれて溜まるか!」


それでも彼は戦いながら最適な方法を探る。
かつて自分が倒した者も同じ事だった。

ドラゴンは大きく息を吸った。 炎を噴こうとする気満々だ。
だが吐こうとした直後、光を放つ丸い円盤がドラゴンの口内に出現した。

口の中で異変に気付いたドラゴンだったが時既に遅し。
光る円盤に塞がれた炎。
強引に栓した蛇口の如く口の中で大暴発。


正男「この力は…!」


正男は守の方に振り向いた。


守「いけぇ… 正男。 この隙がお前にとってチャンスだ!」


深手を負ったが懸命に能力を使い正男をサポートしていた。


正男「その傷で…、すまない」


自分のターンに入った正男はドラゴンに飛び掛かり、拳を握りしめて叩きのめす。
側面から殴られたドラゴンはそのまま傾倒した。


正男「守の行動を無駄にしない! フレイサンダー!!


ドラゴンの頭部に向けて放つ強力な必殺技。
渾身を一撃を受けたドラゴン。 それでも声を上げながら立ち上がろうとする。
しかし大打撃の連続に体力はもたず、再び床に着いた。
そして二度と起き上がらなかった。


正男「守っ! 守!」


正男はドラゴンの攻撃を食らいその場に倒れた守の下へ駆け込む。


正男「おい大丈夫か!?」

守「フッ…、民間人を護る立場が守られる立場になるとはな…。 こりゃあ始末書ものになりそうだ」


冷静を失っていた守。
だが事前に能力の一つとしてダメージを軽減する術を全身に掛けていた。
お陰でドラゴンの攻撃を受けても致命傷に至らなかったようだ。 

…が


守「ぐわっ…、くそっ…、余りにも痛い…、どっかで骨が折れているかもしれん」

正男「守。 手を貸そうか」

守「そうしてもらうよ」


肩を貸した正男は守の身体をゆっくり起き上がらせた。 二人は出口へと向かって行く。
ニュータウンの各所で起きた暴動は正男や守達によって多大な犠牲を払いながら終結を迎えた。


通信機「誰か助けてくれ! 開発機構ビルに奴らが襲撃した。 
増援を要請する! 直ちに増援を! うわーーーっ!



突如、守の通信機が鳴り出した。 スピーカーから悲鳴が響く。
安息の束の間に起きた事態に二人の心は硬直する。


守「なっ 何てことだ…、現地に向かわなければ…。 ぐわぁっ…」

正男「守っ、その傷じゃ無理だ! 後の事は俺に任せてくれ」

守「くそっ…、すまない」


まだ戦う意思を見せていた守。 だが、足手纏いになるのは確実だった。


正男「…別に気にはしないさ」


その後、自力で救助に待つ守と別れた正男はたった一人で開発機構ビルに向かって行く。
暴力に続く暴力…、彼の戦いは激しさを増す。









…回想


ホテルの喫茶室で正男とフジヤマは会話をし続けていた。


フジヤマ「君とこうやって話をしていると、心が落ち着いていくものだな」

正男「なぁフジヤマ。 他の誰かがアンタを気に入らない奴だと見ているが、俺から見ると本当は良い奴だ。
そうだ、俺のとこに来ないか? 俺は駆除業者だが、ペットモンの保全活動とかそれ以外の事もやっているんだ。
アンタの持ち前のスキルだったら凄く発揮すると思うんだ」

フジヤマ「転職の提案か…、ふふっ 考えておこう。 自然の空気を吸いながら仕事をするのも悪くなさそうだ…」


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 


長い会話を終えホテルから出た正男は、ニュータウンの公園の池の柵に持たれ掛けていた。
都市を管理する業務は華やかそうだが、正男から見るとどうもそうは思えない。
各地で頻発する暴徒やテロリストを対応しなければならない。 複雑な事情で絡まれた彼をどうにかしたい…。

そう考えながら池を眺めていた。 水面上には月が映っていた。
感覚を忘れる程の会話でここまで過ぎていたのである。 賑やかな公園も夜になればひっそりとしている。

夜に鳴く鳥と虫、小風で囁く葉、そして皮靴の音…。

一人しかいないこの場所で誰かが近づいてきた。


???「ほぉ…、そこが君の安らぎの場所かい?」


そして気さくに声を掛けられる。 
その声に反応し正男は振り向いた。
声を掛けて来たのは男性。 黒の帽子に黒のコートとズボン。
一見怪しそうな装いだが、怖そうな顔立ちでは無かった事から不信感は薄らいだ。


正男「あぁ、まぁな…」


見知らぬ男性に適当に返した。


黒服の男(???)「ふむ…、赤い帽子がトレードマーク。 君が正男かい? やぁ驚いたよ。
この落ち着いた時間と場所で有名人に会うなんて何という奇遇だ」

正男「有名人? よせよ、俺はあくまで人並の力を持った一般人だ。 人に目立とうとする性ではないからな。
力を持った一般人として生きて行く方が気楽でいられる」

黒服の男「意外と内気だな。 自分を誇らしく思うべきだ」


小さくなった口からふーっと息を噴き区切りを付ける。 そして男はまた口を開いた。


黒服の男「なぁ正男…、今起こっている事に対しどう思っている?

正男「…?」


ニュータウンや周辺各地で起きている事を指しているのだろう。

遠方から来て知った出来事と言えば。
偏屈的で過激な抗議行動を起こす活動家達、破壊をし尽くすテロリストや暴徒…。
とても心地の良いものではない…。

ペットモンやモンスターなど凶暴な生物を倒す力を持つ正男であっても、
社会的情勢や荒れた人々の争乱を抑える術は持っていない。


正男「…簡単には答えられない問題だ」

黒服の男「そうか…。 人はどんなに努力を重ねても、
能天気で自己中心、自分が屑であると認められないような者共に振り回され潰される。 お前がいるとこもその例だ」


回答が不可能と見た黒服の男は一呼吸をした後、再び口を開き、正男に別の問題を出した。


黒服の男「もう一つの問題だ。 お前は何の為に戦っている?



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