レックス・ウィリアム「おらぁっ! さっさとこっちに来なよ」
正男「くっ! 奴に隙が出てこない」
両肩部装着のマシンガンから連射される高威力かつ俊敏な弾丸。
片手の巨大なカッターナイフから振り払った時の生じる建物を真っ二つにする衝撃波。
強力な攻撃に距離は問わない。
レックス・ウィリアム「お前の本気はこの程度だったか」
自身に満ちたレックスは速度を上げ角度を左右往復しながらマシンガンを連射。
凄まじい数の着弾。 弾丸による爆風の壁が迫って行く。
後退りしかない正男は徐々にビルの端へ追いやられる。
正男「なっ…」
レックス・ウィリアム「秘策が見つからなかったようだな」
瀬戸際に立たされ焦燥する様子を見たレックス・ウィリアム。
かなりの余裕の表情で精神的にも追い詰めさせる。
ここで撃たれるか、切られるか、飛び降り自殺を図るか…。 絶望の三択。
レックス・ウィリアム「ザ バッドエンドだ!」
両肩マシンガン連射と巨大カッターによる連続衝撃波で正男に目掛けて放つ。
強烈な二連技を放ったレックス・ウィリアムは前方は煙で立ち籠っている。
煙の中から正男の声がしない。 彼は死んだのだろうか…?
レックス・ウィリアム「虚しいよなぁ…、仇を討てぬ虚しさがよぉ…」
報われない虚しさを語りながら立ち籠る煙を抜け、ビルの下を覗く。
きっと飛び降りたのだろうと…。
その直後! 下から電気を纏った炎が飛び、レックスの顔面に直撃を受けた。
レックス・ウィリアム「ぐおおぉっ!」
レックスは後ろへ倒れた。
ビルの下では正男が窓枠に掴んでいた。
彼は飛び降り自殺を見せ掛け、
下を覗きに来たレックスに片手で技を放とうと待ち構えていたのだ。
秘策が実った正男は窓枠を掴んだまま跳躍、再び屋上に着く。
正男の技で視界を奪われたレックス。
それでもよろめきながら立ち上がり、マシンガンで迎え撃とうとするが…。
正男のファイアーボールで破壊されてしまう。
レックス・ウィリアム「おぉっ… あっという間の形勢逆転かぁ…! やるじゃねぇかぁ!」
何も見えないという不利な状況にも関わらずレックスは喜び、巨大カッターナイフを振るう。
正男はレックスの技を飛び跳ねる事で避け、一気に距離を詰めていく。
足技で相手の脚を折り、何度も顔面を怒りに任せて殴りつける。
レックス・ウィリアム「がはっ! ぐほぉっ! ごほぉっ!」
エルボー、アッパー、ストレートとあらゆる種類の打ち技でレックスの体力を一気に奪っていく。
正男「はぁはぁ…」
正男は握った拳に炎と電気を纏い力を溜めて行く。
隙が生まれているが、レックスには反撃を動かす体力は残されていなかった。
レックス・ウィリアム「ははは…、もうトドメか」
正男「うおおおおおっ!」
レックス・ウィリアム「ぐほぉっ!」
渾身の一振りでレックスの胴体を血飛沫を上げながら貫いた。
レックスは口から大量の血を噴きながらその場で両手を広げながら倒れた。
敗北したのにも関わらず彼は笑っている。
余程、この死闘そのものを楽しんでいたのだろう。
レックス・ウィリアム「ふははっ… これが敗北ってやつか…」
正男「あぁ…、お前の負けだ。 笑いながら死ぬって大した生き方はしていないんだな」
正男は手に付いた血を払いながら言った。
レックス・ウィリアム「あぁ…、笑って死ぬさ。 俺は潰し合い…、殺し合い…、戦い合いをしても笑う。
…お前に特別に教えてやろう。 俺はお前と違って人間ではない…。 揶揄でもない。
俺はお前が戦ってきた奴らと同じ怪物のようなもの。 そして人に似せられた人造兵器みたいなものだ。
"最高の生き方をくれたアイツ"に絶対的感謝しねぇとな…」
正男「…アイツ?」
レックス・ウィリアム「そうだ…。 俺はアイツに造られた。 俺を作った男はこの祭りを起こした。
…それに。 アイツはお前にもう一度会いたがっているそうだ」
正男「何っ?」
レックス・ウィリアム「下のロビーに行くがいい。 下へ続く階段が開いている筈だ」
このビルに何かあるというのか…?
レックス・ウィリアム「あぁお眠りの時間だ。 赤帽子、また戦える時が来るまで俺の事を覚えておけよ…。 …じゃあな」
レックス・ウィリアム…、ニュータウンの暴動の先導者。
屋上で事切れる。
宿敵と出会い、殺すまでの僅かな出来事はずっとこの記憶は忘れる事は無いであろう。
正男「フジヤマ…、助けてやれなくてすまない。 出来る事は無念を晴らす事だけ…」
分かち合った者との別れを告げ、ビルの下へ降りてゆく正男。
レックスが言うビルの中にある真実は如何に…?
…回想
黒服の男「もう一つの問題だ。 お前は何の為に戦っている?」
正男「何って…、それは」
公園でさりげなく語り掛けて来た初見の男に不意に
この世の盲点を突くような題目を出され正男は少々困惑する。
確かにどんな敵でも挫けない度胸と打ち倒せる力で何度も困難を切り抜けたが、
暗然たる社会を切り込められるものではない。
個人では解決出来ない問題に正男の心情に重く圧し掛かる。
正男「うまく答えられないな…」
黒服の男「まっ 暇だったら答えを見つけると言い。
とにかくお前は自分が持っているものを大事にしな」
結局、答えは思いつかなかった正男に気に掛ける。
黒服の男「俺はな…、まともな奴は潜めているが俺は違う。
口だけ達者だけがのさぼる奴等にはドデカい力で痛い目に遭わせてやりたいなと常に思っている」
自分の思っている事を延々と語り出す。
黒服の男「俺は正男ですらやらない事をやってやるつもりだ」
正男「…何をするつもりなんだ?」
黒服の男「まぁいずれ分かる。 社会がひっくり返る刺激的なものだ。
あぁもうそろそろ時間だ。 突然の長話を付き合ってすまないな」
黒服の男は背を向けた。
黒服の男「お前はここにいるべきではない。 立ち去る事を勧める」
そう伝えると黒服の男は去って行った。
正男は心の何処かで悪い予感を感じさせていた。
正男「まさかな…」
正男は自分に話しかけて来た黒服の男が
別の場所で再会するとは知る由も無かった。
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