正男「やあぁっ!!」
轟音と共に、正男の拳がブラッドレッドセンクウザの胸板に叩き込まれた。
しかし、その巨大な体はほとんど揺らがない。その背に乗るコガが、血走った目で叫んだ。
コガ「無駄な足掻きを!」
正男は息を荒げ、額から流れる汗と血を拭う暇もなく睨み返す。 センクウザの咆哮が空を裂き、熱風が吹き荒れる。クリスは遠くから必死に声を張り上げた。
正男(全てのペットモン達に対する愛情と背負っている強い宿命がコガの意志を固くしているのか…?)
クリス「コガ! 本当にそれでいいの! 貴方だって、本当はこんな未来を望んでない筈よ!」
コガ「俺は楽園創造の為に命を懸ける! 使命を変える訳にはいかない! だからこそお前と戦い、そして勝ってみせるのだ!」
センクウザが爪を振り下ろす。正男は渾身の力でそれを受け止め、骨が軋む音を聞きながらも叫んだ。
正男(ペットモン達が傷つける事に嘆くのは分かる…。 でも、コガが描く未来は人間とペットモンが手を取り合えない。 やむおえない…」
正男の拳に強く握り締め、巨大な炎が灯った。
コガ「なっ!」
正男「すまないっ!」
ドゴォーーーンッ!!!
巨大な炎を灯した正男の拳がブラッドレッドセンクウザの顎を撃ち抜いた。
巨体が後ろにのけぞり、轟音と共に地へ倒れ込む。その衝撃でコガの体が宙に投げ出され、力なく地面に落ちた。
正男「コガ!」
駆け寄る正男。コガの身体は傷だらけで、呼吸も浅い。
だが、その瞳だけはまだ熱を宿していた。
コガ「くっ…、流石、世界を駆け巡っただけにある…。 正男の力を甘く見ていたようだ。
だが、俺の意志はミウセカンドが背負ってくれる」
正男「俺が止めるまでだ…」
コガ「そうか…、全く異なるが俺と同じような信念と宿命を背負っているようだな」
震える声で続けた。
コガ「その志で突き進むならそうすれば良い…。 ミウセカンドが打ち倒しても終わらない気がする…。 俺が過去に見た大きな憎しみが押し寄せるような感じがするんだ…」
その言葉を正男に伝え、コガは意識を失った。
正男「未来を考える者を傷つけるのは胸が締め付けられるな…」
正男は拳を握り締め、虚しさを抱いた。 沈む正男の背に、クリスがそっと声をかける。
クリス「正男…、あなたは間違っていない。
コガの苦しみを理解して戦って、暴走を止める事で彼を救ったのよ」
正男「そっ…、そうだな」
正男は目を閉じ、深く息を吸い込む。そしてゆっくりと顔を上げた。
正男「…ああ。立ち止まってる場合じゃない。
コガの言った通り、次は火山だ。ミウセカンドが待ってる……。
クリス、コガを頼んだぞ!」
クリス「分かったわ」
正男は、ミウセカンドがいる火山の方向へ走り出した。
だがその背後、ドーム内の影に、全身が漆黒で人の姿をした者が潜んでいた。
「コガ…、無念を晴らす志を忘れてはならない」
その目からは血が滲み出ている。
じっと正男を見つめ、その瞳に怪しく光る憎悪が宿っていた。