時は帝国軍との戦争を平和条約締結の際にパーティが開かれた辺りまで遡る。

大勢の貴族や商人、勇猛果敢の戦士達がゼロスを始めとした帝国軍の者達と催しを楽しんでいた。



スペール「まさかなぁ…、こうやって愚かだった人類とパーティだなんてな。 ハハハ」

正男「"愚かな"は余計」


会場の窓際のテーブル席で正男とスペールが酒を飲み合っていた。


正男「俺もまさかって思った。 衛星を奪って兵器にしようとしたスペールと気軽に酒とつまみを楽しむって」

スペール「あぁ、衛星の話か? あぁ思い出したくないな。 お前の攻撃で衛星が爆発して俺がお星さまに成りきるってやつ」

正男「ハハハ」

スペール「今では懐かしいぜ」

正男「あんなシロモノをよく弄ろうとしたよなぁ」

スペール「お前の世界に来た時、最初はこの世界では見た事のない文明に驚かされた。
特に科学というものがな。 先行く時代を取り込んで、新たな道筋を付けるには良いと思い、ゼロスと共に科学の領域に踏み込んだ。
魔術師である俺も本を読んだり、講義を受けたりすれば、科学の知識を見つけるのは容易い事だ」

正男「その講義はどこで?」

スペール「技術系の大学だ。 場所はカナリアシティだったかな。 ほれっ、その証拠に学生証に、卒業証書もあるぞ」

正男「まじかよ…」


スペールから口にした技術系の大学。
かつて、ある男によりロボットを暴走させ惨劇を起こした。
今でも鮮明に覚えている。


スペール「さて、敵では無くなったからお前に伝えるべき事があって、こうやって対面している」

正男「本題か…」

スペール「衛星の話だ。 俺はあの時、衛星を改造する為に資料やデータをごっそり引き抜いた。
それらを一つずつ目を通していく内に驚くべき事が明らかになった」

正男「衛星に何が…」

スペール「外部には災害とか気象に使うと言っているが、軍事兵器に転用出来るように設計されているとの事だ


当時、スペールが盗もうとしていた衛星の資料を正男に手渡した。


正男(そういやこの資料はバックに入ってたやつだろうな)


バック…。 それは衛星の機密情報が記す書類が入れた鞄。
クリスは和風の街で偶然、それを拾った事がスペールの戦いの始まりであり、出会いでもあった。
あの戦いの後、資料とデータの行方は分からず、当時のニュースでは紛失したとして報じられた。
それが今、返却される日が来る事になる。

早速、正男は資料の本文を見た。
確かに軍事兵器に転用を視野に入れた上での開発と記されていた。


スペール「正男。 多分、俺はあの会社には闇があると思っている。
俺たちとの戦いが終わり、元の世界に帰っても、火種がある以上、戦いがまた起きるかもしれない。
そこだけ心に留めておけよ」

正男「あぁ分かった。 起きたら、いつもの調子で片付けておくよ」

???「やや、こんな静かなところで四天王との会話ですかな?」


重い空気を裂くかのように、会話の間に入って来た若い男。 
彼の名はマルクス。 気軽で大らかな性格ではあるが、これでも国家連合の代表である。
ジェルファの不祥事の一件で、戦争後、旧来の国家連合の旧代表を含む、元老の殆どが辞職に追い込まれた。

自浄作用の一環で新たに選ばれた一員とも言える。


マルクス(???)「皆がこうやって集まっているんだ。 折角だから、賑やかなところへ来なよ。 ほらほら、さっさと行く」

正男「うわわ…」

スペール「おいおい、えらい大胆な素振りの奴が代表か。 いろいろせわしなくなりそうだぜ」


ここで回想は終える。






正男(起きて欲しくは無かったな…)


あの時、スペールとの話を思い浮かべながら奪われた衛星を追っていた。
だが、この時に正男の携帯が鳴り響く。


AS「正男さん、携帯が」

正男「こんな時に誰だ? (携帯を掛ける) はい、もしもし。 今は話せないから後にしてくれ」

電話の声「そうですよね。 
非情にお忙しい中に貴方に電話を掛けるのは恐悦至極で御座いますね。 
申し訳ございません」

正男「この声…」


声を聴いた瞬間、電話の相手は誰なのか直感に分かった。

星園の丘で出会った衛星開発の会社所属の私設部隊の隊長だ。
近寄りがたい服装の割に正男を尊敬しており、当人も困惑した事を覚えている。 

仕事の募集の為に家の電話番号を公表しているが、正男個人としての電話番号とメールアドレスは公表していない。
それが何故か隊長に伝わっている事に正男は驚いた。


隊長の声(電話の声)「私に電話が来るなんてさぞ驚いている事でしょう。 
私も正男さんが困ってしまうかもしれないと躊躇っていました。 
何せ、貴方の個人の電話番号がこちらに伝わってますからね。
でも、そうはいかないので掛けさせて頂きました」


どうやら、会社側があの手この手で情報を手に入れたようだ。
隊長の予測どおり、正男は戸惑ったが直ぐに冷静さを取り戻した。


正男「要件は?」

隊長の声「貴方が追っている衛星の詳細の位置をお伝えしたいのです」

正男「…!」 

隊長の声「直ぐにメールを送っておきました。
メール内に位置情報が記された地図がありますので、そちらで確認して下さい。
私達の直ぐ貴方の後を追って駆け付けてきますので」

正男「はぁ…」

隊長の声「正男さん…、ご健闘祈っていますよ。 では、失礼します」


プツン… (電話が切れた音)


AS「マンホールで出会った物騒な兵士さんですよね…。 協力しているようだけど、なんだか不気味に感じません?」

正男「分からん。 …だが、送って来たメールの中身に確かに衛星の位置が載っている。
どういう意図か俺も分からない。 ただ、俺たちは現状では信用するしかないという事だ」

AS「そうですね、この状況だと信じるしかない…、ですか」


正男は隊長から貰った情報を信じる事になった。 
いや、信じるしかないという事か…



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